青土社
2022年5月30日 第一刷発行
四六判 / 304頁
異邦でパレスチナへの思いを詩にうたってきたパレスチナ人の詩人マフムード・ダルウィーシュは、一九九四年、オスロ合意によって暫定自治の始まった占領下のヨルダン川西岸の街ラーマッラーに「帰還」したが、「詩作にはシエスタ(午睡)とマージン(生の余白)が不可欠」と語り、イスラエル軍と入植地にとり囲まれた占領下での創作の困難を語り、「今、ここ」の現実を生きる、そのあまりの重さが、文学の言葉それ自体を困難なものにしていることを詩人自ら証言している。
——あとがき / p292より
爆撃されるイラクの街に生い茂った棗椰子が、世界を変える夢を呼びさます——
第三世界の女性たちの声に耳を澄ましフェミニズムを大きく動かした著者が、文学や映画をはじめとして、出来事の深みに降りてゆく想像力をもつさまざまな試みのなかに、新たな世界の扉をさぐりあてる。
——帯文より
新装版として、刊行されました。
いまの世界を生きるひとに、ぜひ読んでほしい一冊です。
著者である岡真理さんの力強いことばをご紹介します。
「人間の命の価値はみな等しいこと。すべての人間に尊厳があること。それを破壊し、蹂躙することは、どこであろうと、誰に対してであろうと、また、いかなる形であれ、許されざる罪であるということ。(略)この国の植民地主義もレイシズムも決して過去のものではないこと。それを支えているのは、私たち自身であること……。それこそが、私たちが現に生きるこの社会の紛れもない底流であるということ。
これが、私たちが生きる世界の姿だ。考えるだに暗澹とするほかはないが、しかし、逆説的にも、このような世界だからこそ、私たちはこの世界に生まれてくるのだろう。私たちひとりひとりが、これらのことに応答するために。そして、この世界で、この世界を、私たちの手で、このようなことのすべてが起こらないということとしての「ワタン」になすために。(新装版へのあとがきに代えて)」
[目次]
1 文学に何ができるか
棗椰子の木陰の文学
出来事の低みで
2 だれが語り、だれが読むのか
「二級読者」あるいは「読むこと」の
正統性をめぐって
私、「私」、「「私」」……M/other‘s Tongue(s)
ハーレムの少女とポストコロニアルのアイデンティティ
3 文学の第三世界
知の地方主義を越えて 新たなる普遍性に向けて
ふたつのアラビア語、あるいは「祈り」としての文学
アリーファ・リファアト、女の生/性の闇を描く
第三世界における女性と解放
フェミニズム、脱植民地主義、ナショナリズム
4 暴力と抵抗を証言する
クロニクル1997~2006
5 夢みる力
パレスチナの夢
ワタン(祖国)とは何か
あとがき
新装版へのあとがきに代えて