冊子のヨベル
2023年1月27日 初版第1刷発行
B6判(128mm×182mm) / 138頁
移動の日は天幕の解体からはじまる。わたしはザラマンゥ。お尻から出した細い糸をこの天幕の骨組みにひっかけてぶらぶらしてるんだけど、今日はたぶんわたしもここから移動しなけりゃならない。
——本書 p3より
だんだん目が慣れてくると、青っぽい色の膜の向こう側にまた別の空間が開かれていることがわかって、何種類もの灰色が組み合わさってできているゴツゴツした岩の山と、その奥に広がっている空!と思った途端、どこからかサァッ、とあらわれた黒い影がハビの視界をゆったりと横切って行く。
——本書 p61より
イヤレのひざの間からあふれ出した水は土の床にほとんど吸い込まれて、もうだいぶ乾きはじめている。濡れた敷物は新しい敷物と取り換えられて天幕の外に干してある。完全なる未知は、からだじゅうにくっついていた粘っこい液体をさっぱりとぬぐい取られて、大きくて柔らかい布にすっぽり包まれて一人目のエイェの腕の中で眠っている。
——本書 p99より
2023年9月に虹ブックスレーベルから『土民生活流動体書簡集(一)バックレ可(笑)』を刊行したよしのももこさんによる1st小説『ジドウケシゴム』。
瀬戸内の島で土と地続きに生きる日々から生まれ出たリズミカルでおとぎ話のような小説です。
芥川賞作家・山下澄人さんによるコメント。
「…ずいぶんわたしたち寄りではあるけれど、わたしたちとは根本的に違うもの、の目線。よしのさんは無謀にもそれをここに書こうと書いた。そもそも人間には不可能なことを、なけなしのそうぞうりょく、だけを道具に言葉にしようとこれを書いた。…」
(虹霓社のサイトより)