2024年5月14日 第二刷
A6判 / 100頁
アーティスト・小指さんによる、2022/6/27~2024/3/29の断片的な日記に、ミニエッセイの付されたちいさな本。
自分は何でこの本(※宇宙人の食卓)を書いたか、はっきりさせるべき、と思った。推敲していくうちにどんどん本来の自分達から離れて行っている気がする。
・誰かが死んだら、それまでの私たちの苦労した日々は誰にも語られない箱の中にしまわれてしまう。ずっと隠していたけれど、なかったことにもしたくない。
・アルコール依存症と彼らについて考え、行動したことは、これまでどんなことも頑張れなかった私が唯一真剣になれたことだった。
・誰にも言えず、誰にも心配もされず、褒められもしなかったあの頃の自分へのまなざし。
・べそかきながら、この依存症のエッセイを喫茶店で書く時間が何より好きだった。それに尽きる。
——不明日 / p17より
中園孔二の本を読んでから、やたらと自分の内側の世界に目を向けたくなった。横浜へ行って、何もない夜道をひたすら一人歩いた。高台から夜景を見下ろし「この灯りぶん人がいて、一人一人に時間がある」と思ったら途方もない気持ちになった。みんな絶対に死ぬ。だからこそ、殺されたらいけないと思う。気付いたら大口商店街についていて、唐揚げ屋の煌々とした灯りで急に現実に戻った。不安な気持ちになる。
子供の時も、こういう得体の知れない不安感にしょっちゅう襲われていた。そんな怖さに耐えられたのは、家に帰れば燈りがついていたからだ。その中に、普通に暮らす父がいたからだ。今、それが私にとってはKだ。
——2023 11 6 / p63より
嵐のような外の音で目を醒めた。
傍に寝ていたKは、いつの間にか起きていてゲーム配信の中継を見ていた。私が寝たふりをしていたら雨は止んだ。雨戸をあけ、窓を全開にすると真っ白な曇り空が広がっていた。何にもない一日。ベッドに寝転がったまま外を眺めていたら、突然、ああ幸せ、と無意識に声が出た。自分でもびっくりした。
傍にいるKは、表情ひとつ変えず他人のゲームの実況を見ている。
——2024 3 29 / p94より (原文ママ)