2025年5月11日 初版発行
A6判 / 106頁
25歳、東京生まれ、実家暮らし。
部活をやめてひとりで帰った通学路、恋に足を踏み入れたとたん降りかかった稲妻のような夜、苦しくて仕方がなかった日々に通った喫茶店のつやつやバタートースト。
どこにでもあるふつうの生活に全力で翻弄されながら、転がるように走る日々。
どんな気持ちの時もさらさら読める、いとしいエッセイできました。
ことばじゃ伝わりきらないけれど、
わたしの武器はことばでありたい。
(著者のホームページより)
名残惜しくて最後のひと切れをじっくり食べきると、もう戻らなければいけない時間になっていた。マスターに小銭を渡して、また固い扉をからんからんと開ける。外は曇り。午後も曇り。でもわたしのお腹の中ではママレード・バタートーストがきらきら光っている、大丈夫。
わたしはスキップするようにかけ出した。
——コーヒーハウス ロフト / p22より
いちごのタルトは小さないちごがごろごろごろと乗っていて、もったりしたカスタードとしっとりめのタルト生地によく合った。もうすぐ一年が終わる。終わりたくなかったものも、早く終わらないかなと思っていたものも、まとめて終わる。寂しかった。辛かった。途方もない時間があった。よく頑張った。よく頑張ったね。タルト生地のいちばん美味しい固いところをすくいあげて、もく、もくと噛みしめる。
——年を納める / p54より
あの日思い浮かべた湖は、さとうさんの心なのかもしれない。おおらかで、のんびりとしているが、弱さや暗いところもきちんと知っている。
——梨をむく / p99より
[目次]
日記を開かない
桜小道
コーヒーハウス ロフト
ちょっとだけ走っていたときのこと
踊っていたよね
モーニングルーティン
シアター
日記に書かれない
年を納める
スジャータ
ぼくら雨をきってきらきらはしる
なつかぜあきかぜ
ブループラネット
戦友
梨をむく
あとがき