写真 / 喜多村みか
発行 / 西日本新聞社
2024年4月29日 初版第1刷発行
四六判 / 208頁
当たり前の日常が、視点を変えると全く別の世界になる——。気鋭の人類学者による、世界の見方を変える「手引き」書。
「うしろめたさの人類学」などで知られる筆者は、コロナ禍やオリンピック、地震、水害、戦争などの社会、時事問題が噴出する「現在」に立脚しつつ、人類学の先行研究、原点であるエチオピアの人類学調査、古里の熊本での思い出をたどっていく。
人類学者のさまざまな眼を通じて、「危機」の時代を読み解き、揺れる「今」を生きるヒントを考える。
レヴィ=ストロース、ルース・ベネディクト、デヴィッド・グレーバー、ティム・インゴルド、岩田慶治、猪瀬浩平、磯野真穂など、国内外の人類学者の論考が登場。人類学という学問と現実をつないでいく試み。
(西日本新聞社のサイトより)
日本に生まれてよかった。その言葉には、自分と相手を固定して、それ以上、相手への見方も、自分への見方も「一ミリも動かしません」といった響きがある。たぶん、その頑なさからは「学び」は生まれない。
どっちがよいとか悪いとか、わかったような気になるのはまだ早い。ちっぽけな自分の殻を脱ぎ捨てて、あらたな世界と自分への見方を手にしてほしい。
——5. 「冷たい」社会 / p39より
他者を真剣に受けとること。インゴルドはそれが人類学の第一の原則だと主張する。それは他者との違いが私たちを「ぐらつかせ、不安にする」ことに向き合う姿勢でもある。(…)他者を真剣に受けとれば、私たちの世界が別様にありうると認めるしかない。
この世界は知識によって全体像があきらかになるような固定したものではない。「世界はむしろ、絶えず生成しつつある」。だからこそ何が生じつつあるのか、目を凝らして注意を払わなければならない。
——24. 参与観察 / p150より
未来はつねに現在の延長であり、現在はすぐに過去のなかに折りたたまれていく。だとしたら、変化は、ずっと先のどこかにあるのではなく、これまで起きてきたことのなかに埋もれている。過去から現在まで進行してきた変化の兆しをとらえずに、未来について語ることはできない。そして、その変化をとらえる視点そのものが重要になってくる。
——おわりに / p203より
[目次]
はじめに
1. 「あたりまえ」の外へ
2. 「意図しえぬ」連関で作られる世界
3. PCR誕生の物語
4. 感染症の危機
5. 「冷たい」社会
6. 「違うこと」への恐怖心
7. レイシズム
8. 民主主義への誤解
9. イタリアの医療崩壊
10. 暮らしに入り込む数字
11. コロナ禍のフィールドワーク
12. 東日本大震災から10年
13. 公共人類学の試み
14. 生物学的市民
15. 被害の科学的認定
16. 近代スポーツの影
17. 儀礼としてのスポーツ
18. 「政治権力」の演劇性
19. 秩序と無秩序
20. 国家と宗教
21. デザイン思考
22. 創造的な知
23. アニミズム
24. 参与観察
25. 共同体に属するとは
26. 三つの実験
27. グラフィックな人類学
28. 貨幣と暴力
29. 枢軸時代
30. 中世
31. 不平等の起源
32. 最善のシステムとは
33. 捉え返す視点
おわりに