素粒社
2023年2月27日 初版第1刷発行
B6判 / 320頁
好きに過ごしたい欲望がいまだ高ぶり昼ごはん代わりにコンビニでチーズケーキを2種類買ってふがふが言いながら夢中で食べた。
食べてしまうと不摂生におそろしくなり、友人に「塩分を抜いて体の水分を出すために甘い物だけ食べる昼食にした」などと聞かれてもいないしかも健康法的にどうかと思われる言い訳を送った。
—— 28年の月日を経て落第がむくわれた / p.83より
息子は最近、『ライ麦畑でつかまえて』を読み終えたのが誇らしいようだ。「こういうのって、なんていうの、ほらこう『洋楽』みたいな言い方ないのかな」とくねくね聞いてくるので「え、なんだろう……英米文学……?」と答えると、キャッと喜んで「かっこい~!」と言いながら走っていって、行った先で娘に「This is 英米文学」と本を見せ「あたしだってそれくらい読んだことあるけど」と言われていた。
—— 糊を買いにいこうくらいの誘い / p.192より
ウェブメディア「デイリーポータルZ」の編集部員であり、ライターでもある古賀及子さんの日記。
ウェブ上に掲載された2018年から2022年までの日記に、書きおろしを加え、103日分のゆたかな分量になっています。
母と、息子と、娘。3人暮らしの生活が、淡々とした筆致で綴られます。
昨日と今日に著しい変化がなくって、劇的な要素がなくって、ユーモラスで愛しい、平熱の日々。
親子の一員のように、いつまでも文中を漂いたいと同時に、自分の日常への愛着を思い出し、そこに帰りたくもなります。
著者は、自身と子どもたちを指して「我々」とか「人々」という言いかたをしたりします。それぞれが、それぞれの足で立って、お互いを所有することなく、別個の人間としてある親子のすがたに、胸がすうっとするような心地よさを覚えます。このような、著者の絶妙なことばづかいは、大きな魅力です。
はじめからおしまいまで順に味わうのもいいですし、その日の気分で適当なページを開いて、飛び込んできたセンテンスを愛でるのもよさそうです。
目次
2018年
2019年
2020年
2021年
2022年
あとがき