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発行 / 筑摩書房
2025年4月10日 第一刷発行
A6判 / 240頁
『傷を愛せるか』の著者の原点となるエスノグラフィ
米国で何者かになろうと海を越えた青年、夫の海外転勤に合わせて渡米した女性、人生に詰んで海外へ拠点を移した男性——。異国の地で、不安定さや傷つきに揺れながらも、そのとき成しえる最良の力で人生にぶつかっていく。その語りに、若き日の著者が耳を傾け、生きるということを同じ目線で考えた記録。解説 奈倉有里
(筑摩書房のサイトより)
そして、それらの物語は、私自身の物語に分かち難く結びついている。心の住人たちは、私の関心をある方向に向け、私のものの見方を変え、いまでも例えばある患者さんの訴えを解釈するときに、比較したり準拠の枠組みを提供している。その人たちに会わなければ、私はその後のいろんな人との出会いを、異なる形で出会い、自分の人生の物語を異なった形で紡いでいたに違いない。だから、彼ら彼女らの話を語りながら、私は、七年前の自分を語り、いまの自分を語る。
——はじめに / p20より
ところが、そんな状況の場所にパレスチナ人としてジェイミーが入っていくとき、マイノリティ性はどんな方向に左右するのだろうか。残念ながら、自分たちが差別されてきたからといって、一切差別する側にまわらないでいられるほど、人間は清く正しくも、強く美しくもいられないようである。ようやく築き上げた砦を守ろうという意思や、それを脅かすものへの攻撃性は、虐げられてきた人たちの方が強いとさえいえるかもしれない。差別するという意識はなくても、同類や仲間で固まることが、ある人たちを疎外してしまうという状況は世の中にあふれすぎるほどある。
——パレスチナ / p182より
この本の随所でとりわけ良いと思ったのは、著者が執筆しながら自らのステレオタイプや思い込みを払拭していく場面だ。アメリカ人だからといって踊りがうまいとは限らないとは考えつつも、やはり「ゲイであればダンスが上手だ」という思い込みがあった、と気づいたくだりでは、くすりと笑ってしまった。
——解説 ひとりひとりの顔が見える / p232より
[目次]
文庫版まえがき
はじめに
孤独の物語
アメリカン・ドリーム
移民候補生
リミナリティ
PTSD(前編)
PTSD(後編)
ステレオタイプ
恋愛と結婚
邦人援護
二〇歳の人生落伍者
謎の女
パレスチナ
レクイエム
GOOD BYE=THANK YOU
あとがき
解説 ひとりひとりの顔が見える(奈倉有里)