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水中の哲学者たち / 永井玲衣

1,760円

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発行 / 晶文社 2021年9月30日 初版 四六判 / 268頁 みなが水中深く潜って共に考える哲学対話。 「もっと普遍的で、美しくて、圧倒的な何か」 それを追い求めて綴る、前のめり哲学エッセイ! 「もっと普遍的で、美しくて、圧倒的な何か」それを追いかけ、海の中での潜水のごとく、ひとつのテーマについて皆が深く考える哲学対話。若き哲学研究者にして、哲学対話のファシリテーターによる、哲学のおもしろさ、不思議さ、世界のわからなさを伝える哲学エッセイ。 当たり前のものだった世界が当たり前でなくなる瞬間。そこには哲学の場が立ち上がっている! さあ、あなたも哲学の海へダイブ! 「小さくて、柔らかくて、遅くて、弱くて、優しくて、地球より進化した星の人とお喋りしてるみたいです。 (穂村弘)」 「もしかして。あなたがそこにいることはこんなにも美しいと、伝えるのが、哲学ですか?(最果タヒ)」 (晶文社のサイトより) 強い負荷がかけられた言葉が好きだ。ギャル語、言い間違い、特殊用語、過剰敬語。変形した言葉を見たり聞いたりすると、うっとりする。 たとえば先週。カフェで仕事をしていると、隣で若いサラリーマンが電話をしていた。彼は、グラスがびしょびしょになったアイスコーヒーに口もつけずに、ぺこぺこと電話の先にお辞儀をしている。ひどく恐縮している様子だった。仕事が大変なのだろう。 「はい、はい、そうですね、はい。そのように仰ってらっしゃるのを聞かせていただきました!」 おお、と思ってつい隣を見てしまう。真面目そうな彼は、心の底から自分の誠意を相手に伝えようと、尊敬語と謙譲語をどろどろのバターにして、言葉に塗りたくっているみたいだ。甘ったるいバターの熱にやられて、言葉は密やかにとろけている。 ——神は酸素である、と彼女は言った / p44より ラジオでは数秒間沈黙があると放送事故になるという。数十秒間沈黙がつづくと、エマージェンシーテープとして、音楽が自動に流れるらしい。わたしたちの人生はいつでも生放送である。放送事故を恐れて、わたしたちは沈黙を空疎な言葉で埋め尽くす。陽気な音楽が流れ始めたって、本当は誰も困りはしないのに。 わたしたちは急いでいる。わたしたちは速度を求めている。もっと速く、もっともっと速く、より多く、より豊かに、より意義深く。より豊穣な実りを。より膨大な成果を。だが哲学対話は「急ぐな」と言う。「立ち止まれ」とささやき「問い直せ」と命じる。 そして、哲学対話は「待て」とも言う。 ——待つ / p103より 10代のころ、わたしは世界のめちゃくちゃさにすっかり打ちのめされた。他者は怪物のようだし、社会は理不尽にあふれ、この世は理解できないことばかりである。そしてなんか知らんけど気がついたらここに「存在」していて、だけどいつかわたしは死ぬらしい。わたしたちはどこから来て、どこへ行くのか?ここはどこなのか?わたしは誰なのか? 「世界、問題集かよ」 哲学科の友だちのつぶやきだ。世界はめちゃくちゃな問題集である。誰も小冊子「解答」を持っていない。中学のときみたいに、解答をこっそりノートに写して提出することはできない。どうにかして解くしか道はない。孤独でしんどくてさみしい。 ——世界、問題集かよ / p204より [目次] まえがき 1 水中の哲学者たち  あともう少しで  飛ぶ  ガシャン  神は酸素である、と彼女は言った  ぜんぜんわからない  ずっとそうだった  おろおろ  こわい  変わる  待つ  もうやめよう  祈る 2 手のひらサイズの哲学  爆発を待つわたしたちの日常について  叫び  我思うゆえに我あれよ  道徳を揺さぶってごめん  ドンドコドンドコドコドコドン  目撃  あの日あのわたしの隣に座ったあのおじさんへ  人生のBGM  信じる  悲劇  シャベル両手で持つ  存在のゆるし 3 はい哲学科研究室です  死ぬために生きてるんだよ  世界、問題集かよ  先生、ハイデガー君が流されてます  わたしたちのちょっとした病  皆さんいつも生まれ変わっていますから   安心してくださいね   あなたは不幸でもわたしは幸福を感じられる   ことについて  だからここにいない君が好き  どうしてこういうことが気になるのですか? あとがき

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