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発行 / 柏書房
2021年5月25日 第1刷発行
四六判 / 256頁
誰の人生も要約させない。
あなたのも、わたしのも。
強くて安全な言葉を使えば、
簡単に見落とすことができる。
だけど取り零された隙間に、
誰かが、自分が、いなかったか?
——はらだ有彩(『日本のヤバい女の子』著者)
〈要約する〉のではなく、
〈一端を示す〉ことを
積み重ねることによってのみ、
受け手のなかで育ちうるものがある。
——古田徹也(『言葉の魂の哲学』著者)
偉い人が「責任」逃れをするために、「敵」を作り上げて憂さを晴らすために、誰かを「黙らせる」ために言葉が使われるようになったこの世界で、凝り固まった価値観を解きほぐし、肺の奥まで呼吸しやすくしてくれるような……
そんな「言葉」との出会いは、まだ可能だろうか?
本書は、マイノリティの自己表現をテーマに研究を続ける文学者が、いま生きづらさを感じているあなたに、そして自らに向けて綴った、18のエッセイである。
障害者運動や反差別闘争の歴史の中で培われてきた「一言にまとまらない魅力をもった言葉たち」と「発言者たちの人生」をひとつひとつ紹介していくことを通して、この社会で今、何が壊されつつあるのか、人間としての尊厳をどのように守っていけるのかを考えていく。
(柏書房のサイトより)
「青い芝の会」の主張は、ものすごく画期的だった。画期的すぎて、多くの人から「過激な人たち」と受け止められた。
例えば、「障害者は親元で暮らすか、専門家がいる施設に入るのが幸せだ」という意見に対しては「街中で普通に生きさせろ!」と反対したし、「少しでも障害を軽くした方が良い」という価値観に対しては「『できないまま』じゃいけないのか!」と反論した。
そんな彼らの主張には、それまでの「障害者イメージ」を根っこからひっくり返してしまうパワーがあったし、主張を受け止める人の頭が真っ白になるようなパンチ力があった。
——第5話 「地域」で生きたいわけじゃない / p78より
強権的で抑圧的な社会というのは、いくつかの段階がある。
まずは、誰かに対して「役に立たないという烙印」を押すことをためらわなくなる。
次に、そうした人たちを迫害して、排除して、黙らせる。
黙らせたところで、今度は逆に語らせる。
「こうしたことを言えば、仲間として認めてやらなくもないんだけど」という具合に、「強制」することなく、あくまで「自発的」に語らせる。
こうして「強制的に語らせた人」の責任は問われることなく、「自発的に語ってしまった人」だけが傷ついていく。
——第7話 「お国の役」に立たなかった人 / p106より
言葉というものが、偉い人たちが責任を逃れるために、自分の虚像を膨らませるために、敵を作り上げて憂さを晴らすために、誰かを威圧して黙らせるために、そんなことのためばかりに使われ続けていったら、どうなるのだろう。
肯定的な感情と共に反芻できない言葉ばかりが、その時、その場で、パッと燃焼しては右から左に流されていく。そんなことが続いていけば、言葉に大切な思いを託したり、言葉に希望を見出したり、言葉でしか証明できないものの存在を信じたり、といったことが諦められたり軽んじられたりしていくんじゃないか。
多くの人が言葉を諦め、言葉を軽んじ続けたら、世界に何が起きるのだろう。きっと、ろくでもないことしか起こらないはずだ。次の世代にそんな世界を引き継がせないために、いまぼくにできるほとんどすべてのことが、ぼくを助けてくれた言葉たちへの恩返しのために、この本を書くことだった。
——終話 言葉に救われる、ということ / p247より
[目次]
まえがき 「言葉の壊れ」を悔しがる
第1話 正常に「狂う」こと
第2話 励ますことを諦めない
第3話 「希待」という態度
第4話 「負の感情」の処理費用
第5話 「地域」で生きたいわけじゃない
第6話 「相模原事件」が壊したもの
第7話 「お国の役」に立たなかった人
第8話 責任には「層」がある
第9話 「ムード」に消される声
第10話 一線を守る言葉
第11話 「心の病」の「そもそも論」
第12話 「生きた心地」が削られる
第13話 「生きるに遠慮が要るものか」
第14話 「黙らせ合い」の連鎖を断つ
第15話 「評価されようと思うなよ」
第16話 「川の字に寝るって言うんだね」
第17話 言葉が「文学」になるとき
終話 言葉に救われる、ということ
あとがき 「まとまらない」を愛おしむ