選者 / 谷川俊太郎
発行 / 岩波書店
2014年3月14日 第1刷発行
A6判 / 400頁
青春を戦争の渦中に過ごした若い女性の,くやしさと,それゆえの,未来への夢.スパッと歯切れのいい言葉が断言的に出てくる,主張のある詩,論理の詩.ときには初々しく震え,またときには凛として顔を上げる.
素直な表現で,人を励まし奮い立たせてくれる,「現代詩の長女」茨木のり子のエッセンス.
(対談=大岡信,解説=小池昌代)
(岩波書店のサイトより)
心の底に 強い圧力をかけて
蔵ってある言葉
声に出せば
文字に記せば
たちまちに色褪せるだろう
それによって
私が立つところのもの
それによって
私が生かしめられているところの思念
人に伝えようとすれば
あまりに平凡すぎて
けっして伝わってはゆかないだろう
その人の気圧のなかでしか
生きられぬ言葉もある
一本の蠟燭にように
熾烈に燃えろ 燃えつきろ
自分勝手に
誰の眼にもふれずに
——言いたくない言葉 / p143より
茨木のり子の詩を読むのに、構えはいらない。そこに差し出された作品を、素手で受け取り、素直に読んでみるに限る。意味不明な部分はない。とても清明な日本語で書かれている。ときには明解にすぎ、謎がなさすぎると、不満を覚える人もいるかもしれない。けれど、この詩人の詩が威力を発揮するのは、おそらく、読み終えたのち、しばらくたってから。言葉が途絶えたところから、この詩人の「詩」は、新たに始まる。遅れて広がる感慨があり、それは読後すぐのこともあれば、何十年か先に届く場合もあるだろう。
——水音たかく——解説に代えて / p361より
[目次]
《選者のことば》 初々しさ(谷川俊太郎)
『対話』
魂/根府川の海/対話/ひそかに/武者修行/内部からくさる桃/こどもたち/或る日の詩/もっと強く/準備する
『見えない配達夫』
見えない配達夫/敵について/ぎらりと光るダイヤのような日/悪童たち/六月/わたしが一番きれいだったとき/小さな娘が思ったこと/あほらしい唄/はじめての町/大学を出た奥さん/怒るときと許すとき
『鎮魂歌』
花の名/女の子のマーチ/鯛/大男のための子守唄/本の街にて/七夕/りゅうりぇんれんの物語
『茨木のり子詩集』
ゆめゆめ疑う/ほうや草紙/抜く/首吊/言いたくない言葉
『人名詩集』
くりかえしのうた/大国屋洋服店/兄弟/王様の耳/箸/居酒屋にて/知/トラの子
『自分の感受性くらい』
詩集と刺繍/自分の感受性くらい/存在の哀れ/青梅街道/二人の左官屋/波の音/顔/木の実/四海波静
『寸志』
幾千年/落ちこぼれ/冷えたビール/苦い味/笑って/聴く力/訪問/賑々しきなかの/寸志
『茨木のりこ』
活字を離れて/一人は賑やか/みずうみ
『食卓に珈琲の匂い流れ』
部屋/足跡/答/あいつ/ある存在/総督府へ行ってくる/さくら/四行詩
『倚りかからず』
木は旅が好き/あのひとの棲む国/鄙ぶりの唄/お休みどころ/時代おくれ/倚りかからず/笑う能力/ピカソのぎょろ目/水の星
『茨木のり子集 言の葉3』
草/行方不明の時間
『歳月』
五月/その時/夢/お経/道づれ/部分/駅/夜の庭/恋唄/一人のひと/急がなくては/なれる/(存在)/古歌/歳月
拾遺詩篇(詩集未収録作品)
『茨木のり子全詩集』所収
「「スクラップブック」から」より
いさましい歌/三月の唄/六月の山/五月の風は/四月のうた/山小屋のスタンプ/それを選んだ/通らなければ/こわがらない/かの名称/詩/みかんの木/麦藁帽子に/灯
《対談》美しい言葉を求めて(茨木のり子・大岡信)
水音たかく——解説に代えて(小池昌代)
茨木のり子略年譜(宮崎治)