発行 / KADOKAWA
2026年2月10日 初版発行
新書判 / 280頁
なぜドイツはイスラエルを批判できないのか?
——犠牲と加害の反転はどのようにして進んだか
『歴史修正主義』(中公新書)で注目された歴史学者が提示するガザ紛争を理解するための新たな視座!
ドイツの戦後の歩みはユダヤ人を究極の犠牲者にした!
紛争によりガザが破壊し尽くされた中、イスラエルの姿勢はホロコーストの記憶とも結びつけられる。
ドイツはナチ犯罪者を最後の一人まで裁き続け、「反ユダヤ主義」の撲滅を掲げてきた。そのためドイツによるイスラエル支援は、補償にとどまらず武器供与まで及んだ。イスラエルへの安全保障は「国是」だったのである。
ドイツの「過去の克服」は、両国の政治、経済、軍事の利害と密接に絡んできた。その歴史を解きほぐし、変化を迫られる姿を描く——。
世界は戦争を止められないのか。ナチズムの克服は、より良い世界をつくるためではなかったのか。ドイツとイスラエルの特殊な関係をつまびらかにすることで、ガザ紛争を防げなかった世界構造のねじれが見えてくる。
(KADOKAWAのサイトより)
しかし、犠牲者であるユダヤ人と、特にイスラエルへのドイツの関わり方は、公平無私なものではあり得なかった。ホロコーストが一因となってイスラエルが生まれたように、イスラエルの建国によりパレスチナ難民が発生したという因果関係は自明である。アラブ諸国との戦争でイスラエルが壊滅するようなことがあれば、それこそ「第二のホロコースト」であり、ドイツは間接的な責任を負うことになる。(…)ユダヤ人が安心して暮らせる場所が存在することが、ドイツの良心には必要であったのだ。このため、ドイツはイスラエルに補償を行うだけでなく、軍事支援も行ってきたのである。
——序章 世界の機能不全はどのようにして起こったか / p7より
加害者を想像できない一方で、犠牲者としての日本人像はヒロシマに象徴されるように定着した。個人は戦争においても自身の行為に責任を負う主体であり続けるという理解は、日本では定着しなかった。他方で私たちは、加害者をあぶり出すことをしないことで、戦地から戻った父や夫が外で何をしていたのか問い詰める精神的な負担も免除されてきた。個人の責任を問わなくてよかったからこそ、過去は具体性を欠き、安心して平和と安定を祈念することができた。
——第二章 裁き / p116より
過去の不正を償い、同じようなことが起らない制度をつくる努力が徐々にねじれていってしまった背景にはやはり、不正を正す意図で始まった試みが、新たな不正につながり得ることを認識しづらい、もしくは認識できないことがある。これにより現在起こっていることが適切に評価できず、私たち自身が不正を継続させる要因になってしまうのである。
——第五章 言葉と認識 / p209より
[目次]
序 章 世界の機能不全はどのようにして起こったか
第一章 国籍——国民の境界は歴史が形づくる
第二章 裁き——犯罪をどこまで、どう裁いたか
第三章 国際法——反省から生まれた新しい秩序
第四章 償い——和解のための補償、安全保障へ
第五章 言葉と認識——私たちはパレスチナを理解する言葉を持っているか
終 章 ゴルディアスの結び目
あとがき
主要参考文献一覧