発行 / 岩波書店
1979年10月22日 第1刷発行
新書判 / 242頁
いい詩とは,ひとの心を解き放つ力をそなえているばかりか,生きとし生けるものへのいとおしみの感情をも誘いだしてくれます.
詩人である著者が,その心を豊かにしてきた詩の宝箱の中から忘れがたい詩の数々を選びだし,情熱をこめて語ります.ことばの花々にふれてみなさんは,きっと詩の魅力にとらえられるでしょう.
(岩波書店のサイトより)
見ていると、十代の後半までに、はっきり自分をつかむことのできる人がいます。つまり自分の時間を何に一生捧げて悔いないか、自分の素質を早い時期に見定めることのできた人で、聡明という言葉はこういう場合にこそぴったりだと思えるくらい。でもたいていは、長い模索とあちらにぶつかりこちらにぶつかりしながら自分をつかみとってゆくのがふつうで、それはこの詩に書かれているように、
できるなら
日々のくらさを 土の中のくらさに
似せてはいけないでしょうか
という、つぶやきとも悲鳴とも忍耐ともつかない内的独白をかかえて、苦闘することになります。
——3 生きるじたばた / p88より
さびしさにいたたまれなくなって、友人に電話して声をききたくなったり、旅に出たり、衝動買いをしてしまったり、そういうことは自分にゆるしてやりますが、もっと大事なことで何かを決断したり、出所進退をあきらかにしなければならないとき、「寂しさの釣りだしにあってるんじゃないでしょうね?」と自分の心を点検していることがよくあります。寂しさの釣りだしは、まずおいしい餌としてぶらさがるので、ついパクリとやってしまい、あとで大後悔。自己顕示欲で釣られることも多く、いつも戦争という形でくるわけでもないので油断できません。
——3 生きるじたばた / p162より
これから先、いろんなことが科学的に解明されてゆくでしょうが、死後の世界のことはついにわからずじまいで最後まで残るでしょう。どんな敏腕なルポ・ライターも、あの世からのルポを送ることはできません。想像力をはたらかせ、それぞれが、ただふみ迷うばかりです。
でも、どうやっても、たった一つだけ、わからないことがあるというのは、考えてみれば、素敵に素敵なことではないでしょうか。そんなことを感じさせ、考えさせてくれる詩です。
——5 別れ / p231より
[目次]
はじめに
1 生まれて
かなしみ……谷川俊太郎/芝生……谷川俊太郎/I was born……吉野弘/祭……ジャック・プレヴェール/伝説……会田綱雄/春の問題辻征夫
2 恋唄
みちでバッタリ……岡真史/十一月……安西均/それは……黒田三郎/僕はまるでちがって……黒田三郎/君はかわいいと……安水稔和/鳩……高橋睦郎/葉月……阪田寛夫/練習問題……阪田寛夫/顔……松下育男/海鳴り……高良留美子/木……高良留美子/男について……滝口雅子/秋の接吻……滝口雅子/ふゆのさくら……新川和江/助言……ラングストン・ヒューズ
3 生きるじたばた
くるあさごとに……岸田衿子/見えない季節……牟礼慶子/夕方の三十分……黒田三郎/ひどく……川崎洋/言葉……川崎洋/海で……川崎洋/地名論……大岡信/ちびへび……工藤直子/てつがくのライオン……工藤直子/便所掃除……濱口國雄/住所とギョウザ……岩田宏/風……石川逸子/寂しさの歌……金子光晴/愛……谷川俊太郎
4 峠
小学校の椅子……岸田衿子/一生おなじ歌を 歌い続けるのは……岸田衿子/新しい刃……安西均/生命は……吉野弘/その夜……石垣りん/くらし……石垣りん/諸国の天女……永瀬清子/旧い友人が……河上肇/老後無事……河上肇/味噌……河上肇
5 別れ
幻の花……石垣りん/悲しめる友よ……永瀬清子/羊の歌……中原中也/アランブラ宮の壁の……岸田衿子