発行 / ナナロク社
2017年9月30日 初版第一刷発行
四六変 / 128頁
詩人・三角みづ紀
はじめてのエッセイ集
書き下ろしを含む三十篇
失恋する。泣く。笑う。誰かや、何かを、いとおしいとおもう。どうあっても、詩人である彼女が選ぶ言葉のひとつひとつは、たやすく紡がれてはいない。
——橙書店店主 田尻久子
中原中也賞、萩原朔太郎賞、歴程新鋭賞ほか、数々の賞に輝く詩人・三角みづ紀によるはじめてのエッセイ集です。
装丁は前作の詩集『よいひかり』に続き、服部一成さん、装画はさとうさかなさん。1篇4ページからなるエッセイ30編を、30点の挿画が彩ります。印刷に4パターンの特色を使用した挿画が 文字の向こうに浮かび上がる、美しい一冊です。
(帯文、ナナロク社のサイトより)
しばしば「詩人って何をしているの?」と問われる。それはもちろん詩を書き、詩だけではなくてエッセーや本の紹介文やコピーライティングの仕事もあって、いわゆる文筆家というところなのだろうけれど、厳密には詩人は生き方であって職業ではないのだろう。だから「いわゆる文筆家です」とは曖昧な回答。「じゃあどんなときに詩を書いているの?」と問われたときも思わず曖昧な回答をしてしまう。生き方であるから生きているだけで詩を書いているのが詩人という存在。
——散歩にでかける / p6より
飛行機のマークではなく、列車のマークが愛らしいスタンプを確認したわたしは、おもわずみちみちした。満ち足りている。自身の気持ちが満ち足りていて、それでいて、風景も感情もまわりのひとたちもたっぷりとあたたかいといったオノマトペがみちみちする。きゃらきゃらするが傍観だったら、みちみちするは主観なのだ。わたしの目線で、わたし自身が満たされて、且つ、たっぷりあたたかく、すべてが充足している。
——温度を持つ言葉たち / p36より
帰るって、場所ではなく状況なのだろう。とじつつあり、目前の言葉と出会いながら、新しさに怯えながら。でも、ずっと眠っていたいところを知ってしまったのだ。比喩ではない。
変わることをおそれていた。知らないことはおろかで幼く美しい。知ることを知らないまま生きてきて、これからわたしはますますまぶたをひらいたりとじたりする。
——あとがき / p125より
[目次]
柔らかい霧
散歩にでかける
からだが記憶する雪
母とお姫様
あいにくのお天気
とりとめなく庭が
月曜日の休日
わたしのなかの器
温度を持つ言葉たち
こわいおばけ
わざと泣く
恋愛みたいな町
あたたかい灯り
緑のガラス
おっきいばあちゃん
ビストリツァ駅
瞼も耳も
生きている音
会いたいと思えば
地球と視線を交わす
全てが人並みに
豆を煮る
ホリディ
ふたり並んで
名前のない植物たち
ひらく、とじる
手袋がきらい
額縁
いつも背中を
東西南北線
あとがき