A5判(147mm×210mm) / 160頁
名前の前に「湖」をつけるようにした少し前から、なんとなく自分は湖に浮かぶ一隻のボートである気がしている.
湖は山にかこまれていて、おそらく早朝で、霧がたちこめている.視界は頼りにならない.(中略)ほとんど不安定な中で、わたしは自由と楽しさを感じている.
(中略)
このイメージはわたしの中にずっとある.
このままずっと在り続けていてほしいとわたしは願っている.
——本書p.52より
やれやれ……今日びは、「定年まで働くのは当然でしょう、ヘタしたら70歳まで働くことになるかもよそしたら年金が云々」という言葉が地球をまわる衛星の如く、頭のまわりを公転してる民族2名に、至近距離から狙撃されました.
——本書p.60より
となると、こんな状態の時に手に取るのは村上春樹一択になる.どっしりした文章を目で追っていると、なんでか受容された気持ちになるから不思議だ.この人の文体は、あると助かる.下手な市販薬よかずっと.
——本書p.147より
湖麻美さんによる日記(2021/5/15〜2021/11/3)。
怒ったり、悩んだり、感動したり、考えたりする、日々の記録です。
手書きの文章と、まるで彼女の分身のようなイラストが踊ります。
どきりとさせられるところがありながら、思わず笑ってしまうような、滋味深い思索に触れる贅沢な体験です。
日によって、もしくは、おなじ日であっても、文字が変わっていく様は、感情の軌跡をそのまま視覚化しているようで、味わいがあります。
ことばのセンス、言い回し、着眼、姿勢、どこを取ってもほんとうに魅力的です。
ページをめくるたび、彼女のことをもっと知りたい、もっとおしゃべりがしたい!という気持ちが加速します。
読めば読むほど、親しみと好意がふくらみ、おしまいには大好きな友だちを見つけたような気持ちになります。
特別な日めくりカレンダーみたいに、毎日、麻美さんのことばを摂取できたら、小さく、確かな力になりそうです。