発行 / 左右社
2022年11月22日 第1刷発行
四六判 / 204頁
踏み込みすぎるちょっとだけ手前で写しとられた人生いろいろ。こんなふうにまっすぐ人間を見られる南さんがうらやましい。——都築響一
『MATSUOKA!』『島根のOL』で話題の写真家・南 阿沙美による、はじめてのエッセイ集。
友人、夫婦、仕事仲間、親子、人と犬……12通りの「ふたり」の気配を、写真と文章で描き出す。
一番小さくて、一番大きな物語。
(左右社のサイトより)
こないだ家で写真を撮ったとき、りくさんとりくさんの身体の距離が、私とりくさんの距離と同じくらい離れているふうに感じた。今は、手術後で意識がぼんやりしているせいか、自分からわざわざ離れる力が自然と奪われているかのように、りくさんがりくさんの身体にしっかり収まっていた。表情がこないだとは違っているように思った。
りくさんが自分の身体のなかにいる顔をしていて、それがとても美しくて、きれい!わあきれい!と言いそうになったけれど、色々なものに繋がれた娘の姿を心配そうに見ているご両親がすぐ隣にいるので、ぐっと堪えて黙ってばしゃばしゃ撮る。
——りくさんとスケキヨ / p19より
二子玉川の混み合ったマクドナルドで、近くの席の男の子がオレンジジュースをこぼして大声で泣き叫んでいるのを見て、「つらい……」と微笑みながら涙を流していた田島さんの姿は、今でもときどき思い出してしまう。
——田島夫妻 / p109より
自分はひとりに思えるときがある。みんな誰かと親密な関係を結んでいて、ふたりで生きているように見える。
神戸に住んでいる、時々連絡を取る友だちがいる。彼女は大好きな人と結婚して、かわいい男の子二人を産み育て、独身時代から一緒の長寿猫とみんなで幸せに暮らしている。遊びに行くと楽しいのだが、ひとり家に帰り思い出すと、あまりにも眩しい。誰だって、良いことばかりじゃないことは知っている。だけど眩しい。
彼女が、「人はひとりだから、誰かと仲良くなれるんじゃないかな」と言っていたことがあった。意味はわかるけど、わからなかった。(…)
だけどやっと最近、そうだなあ、と思えてきた。
それで、また彼女も、しっかりとひとりなんだと、私と同じひとりなんだと思えたのだった。私もひとり。彼女もひとり。私と彼女はふたり。
——あとがき / p199より
[目次]
りくさんとスケキヨ
いたむらさんと酒井さん
マニ親子
バーバーマエ
電気グルーヴ
ジャックとまきさん
田島夫妻
たかおさんとお母さん
まゆちゃんとしょうごくん
りえちゃんとあいちゃん
上田さんとTさん
やまさん
あとがき