サウダージ・ブックス
2020年10月21日 初版第一刷発行
四六判変形 / 128頁
夏葉社・島田潤一郎さんとの対談冊子付
(画像2枚目参照)
なんだかたまらなくさびしいこの場所で、詩を読む目と耳が、そっとひらかれていくような気がした。
「散文 詩と夜空にかがやくもの」p.97より
ことばが必要だと思った。
マスメディアやSNSを通じて拡散され、あっというまに消え去る情報ではない。世界について一人ひとりの人間が何かを感じ、想像し、考えてきた「時間」という重みをもつことばが必要だと、ぼくは思った。
「あとがき」p.120より
サウダージ・ブックスのアサノタカオさんによる著書。
本を読むことと、南方への旅を軸として、ちいさな声で語られる、美しい随筆集です。
本書にも何度か登場する「暗がり」ということばが、この本をよくあらわしています。
「自分のこころの暗がり(p.42)」。
それは、しずかな、孤独な場所でありながら、闇や暗さということばの持つ、負のイメージを担っていません。
さみしいけれど、満ち足りている、たいせつな場所——アサノさんは、自身のうちにそうした暗がりを隠しもっていて、無視をしたり、なにかほかの、にぎやかなもので塗りつぶしたりせずに、きちんと、大事にしているのです。
そして、ときおり、そこへ降りていきます。
わたしたちにとっては、この本を読むことが「暗がり」へ降りていく手段のひとつになるのではないかと思います。
目次
本を読む夜が深く極まるとき
1 本から遠く離れて——読書論
散文 本から遠く離れて
ひとりになること
愛する人たちとの絆を切って
散文 本屋さんに行くと沈黙がある
小さな声が小さな字にくっついて
京都の善行堂で
本を書いたことのないぼくに
散文 「自由」の風からの贈り物
主人のない夜の本小屋では
散文 書を持って、海へ出よう
カバーを外して、中身をぶん投げ
文字に当てていた指が
海は、ひらかれた書物に似ている
散文 コーヒーと椅子、そしてことばのろうそくたちと
ことばが見つからない
本を読むことが苦しみとなり
2 君のものではない、世界の声に耳をすませろ
——旅の短章
散文 君のものではない、世界の声に耳をすませろ
サンパウロから州の西に向かう
必要最小限の生活用品
ジャングルの巨木から切り出した数本の柱が
夜のとおり雨が降りはじめた
散文 霧のなかの図書館で
出発前日に大雨が降り
「世界の秘密を知るために」
雲ひとつない星空の下で
散文 そしてダラダラはゆく
飛行機が南の島の上空にさしかかり
散文 群島詩人の十字路で耳をすませて
散文 詩と夜空にかがやくもの
3 読むことの風
散文 読むことの風
海に向かって、石ころを投げる
あとがき