書肆侃侃房
2021年2月27日 第1版第1刷発行
四六判 / 256頁
せめて、泥まみれになったままのまちが、家が、居間が、寝床が、暮らしが、いまも地続きの土地に存在していることを一日に一度くらいは思ってみてほしい。
これは東京生まれ東京育ちで、無邪気なまま育った自分に向けて書いている。
——歩行録 / p.174より
「ぼくの暮らしているまちの下には お父さんとお母さんが育ったまちがある」
岩手県陸前高田市は、嵩上げによる復興工事により、かつての町のうえに、新しい町が築かれました。
まっしろい防潮堤、削られて四角くなった山やま、それでもやっぱりここがいいと、かつての町のうえに暮らすひとたち。
瀬尾さんは、陸前高田市を中心とした被災地域に足をはこび、土地のひとたちの話を聴きつづけ、その営みに親しく交わってきました。
本書に収められている「歩行録」には、2018年から2021年までの、そうした日々が綴られます。安易に答えを出したり、早急に問題を片付けたりしようとしない、瀬戸さんの真摯なまなざしに見つめられる記録です。
「二重のまち」は、うつくしい絵を織り交ぜた、架空の町のものがたり。
復興工事に伴い、かつての町跡が失われてゆく陸前高田で、かつてのまちやその営みを想像するための細い糸がほしいという思いで書かれました(本書p238より)。
かなしさと、やさしさが寄り添い合って、一緒にいるようなものがたりです。
遠くのだれかの悲しみを思うことについて、深く考えたくなる一冊です。
目次
二重のまち
交代地のうた
歩行録
“二重になる”ということ
「二重のまち」によせて 小野和子