13番館
2023年11月11日 初版第一刷発行
B6判 / 146頁
「ずっと旅してたい」と友達は言い、「うん」と私も答えた。穏やかな心で居られる場所であれば住む場所はどこだっていいのかも。
電飾みたいな小さな光の集合を上空から眺めた。他人から干渉されない点では都会の方が合っていることを、私たちは家までの帰り道に確認しあった。
——2月15日(水)/p27より
私たちは普通の恋愛にうまく乗れないね、このままだと一緒に堕ちていってしまいそう…これからどうやって生きていこう?でも、「夜ごはん一緒に作る?」って誘って作ったご飯はいつもよりずっと美味しかったし、立ちくらみの正体が昨日飲んだ薬のせいだってこともわかったし、決められずにいたぬいぐるみの名前が“へびいちご船長”に決まったし、とりあえず目の前の生活をやっていくしかないのかもしれない。
——2月27日(月)/p47より
頭の中に無数のマンホールがあって、その一つ一つから勢いよく水が溢れてくるように、閉じていた記憶が急に蘇ってくることが増えていて、元の私に戻ってきている。こうなると本もまともに(まともに、というよりすらすらと)読めないし、散歩してるだけでなんだか感傷的になってしまうし、人の話は中々頭に入って来ないし、すぐに疲れて眠くなるし、すごく涙脆くなってしまう。
——4月2日(日)/p96より
2023/2/1~4/30の日記と、同年5月、7月の数日間の記録。
著者のきらさんは、友達のほにと一緒に暮らしています。
さまざまな不調、薬に翻弄される心身、週に数日の労働をこなす日々。公園で本を読んだり、散歩したり、洗濯をしたり、料理をしたり、マッチングアプリでフェミニストと出会ったり——古着屋に、たくさんの展示に、デモ。
床にころがりながらも、彼女の日々は、とても豊かです。背のびをせず、消費的にならず、身の丈に充足して、手の届く世界における生活を、楽しむ朝と夜。自分の手で、ゆたかさを作りだしてゆく毎日。
とてもすてきな、愛しい記録です。