other
2023年11月11日 初版 第一刷
2024年7月17日 新版 第一刷
116mm×159mm / 110頁
常に光に闇をみる私という人間を一体どう生きればよいのか、もがき苦しんだ日々は長い。けれど、それは同時に、闇に光をみることができる自分でもあるのだということに、時間のずいぶん経ってから気がついた。だから私は自分を偽りたくない。
ときに言葉足らずでも、文を書くという行為そのものがせかいとそこへ住む人間への信頼を表現するものでありたい。そうでないなら何もしないで黙っていなければならないほど、そうでありたい。
——まえがき / p3より
ある朝ばったり会ったとき、世間話のついでで、さいきん胃のあたりがずっと痛いんです、と心配させるようなことをいってしまった。しばらくあとに、ぴんぽんとチャイムが鳴ったのででると、おじいさんが映画のDVDを持ってちょこんと立っていた。
「そういうときはいい映画でもみて、はやく寝ることですよ。では」
——ご近所で / p28より
その人と出会ったころ、恋人やその家族とのあいだのことで悩みぬいていて、なにがどうころんでもいいことが起こらない気がしていた。なんでもない時に急に胸があふれだしそうになることがつづいて、そういうときはみんなといる場から誰にも告げずにいなくなるということをくり返していた。
ある日、友だちからメモを渡された。
つらいならすきなだけ逃げるといいよ。でもあぶなくないところに逃げてね。あと、なにかを捨ててつよくなろうとするのはやめること。
——てがみで その二 / p53より
やさしさ、とはなんだろう。
ほんとうにやさしいとは、どういうことだろう。
やさしかったせかいの記憶と、やさしくできなかったせかいがほんとうはどんなせかいでありたかったのかの告白をのこしておくために、書き下ろした31の掌篇。
(著者のInstagram投稿より)
[目次]
まえがき
Ⅰ
巣鴨の家で
喫茶チェーンで
真夜中の手まえで
はじめてのひとり暮らしで
てがみで
叔父の家で
ご近所で
エチオピアレストランで
宅急便で
受話器のむこうで
三年六組で
渡り廊下で
因島で
診察室で
友人の部屋で
教授室で
てがみで その二
高級マンションで
マルシェで
芸能事務所で
四月の台湾で
べつの人生で
五反田のレストランで
Ⅱ
集団生活で
でんわで
ピンクいろの壁のいえで
爪で
とおい時間で
テレビで
海のむこうで
このせかいで
あとがき