青本柚紀・高島鈴・水上文 / 編著
現代書館
2023年8月25日 第1版第1刷発行
A5判(148mm×210mm) / 96頁
「われらはすでに共にある」を掲げた本書は、しばしばトランスの人々が単純化され、切り詰められ、その複雑で多様な現実の生のありようを顧みられない現状に抗して、個々人の声を収録している。内容も語り口もまるで異なる複数のエッセイを読むことで、必ず伝わるものがあると信じている。(…)ただ、とりわけトランスではない読者は、本書を読んでトランスの人々や今起きている事柄を「理解」したように思わないでほしい。ここにいる人々は誰も、何かの代表ではない。言葉が一定以上得意な人ばかりが集まった本書の外に、多くのまた各々異なる人々が存在すること、言葉にならない言葉が常に存在することを、決して忘れないでほしい。
——はじめに / p3より
理不尽な世界の中で、最良だと思える選択肢を探して私は生存してきた。生存のためのロールプレイは、嘘だろうか?答えがどうであれ私はそれは抵抗のための武器だと思う。であれば、私は少しでもマシに生き、少しでもマシな世の中を作るために、使っていく。特にそれよりマシな選択肢は用意されてないから。
——身体と知を売ることについて / p73より
あなたが好きだ。ずっと好きだ。とてつもなく。消えないでほしい。だれにも支配されないで。ほんとを言うと、あなたをひとりじめしていたい。ぼくのぬくもりに埋もれていいよ。ふわふわの毛で包んであげる。傷つけられにいかないでいい。人間じゃなくたっていい。男じゃなくたっていい。模範的な女なんか目指さなくていい。
——共犯者 / p79より
2022年11月に刊行された反トランス差別ZINE『われらはすでに共にある』の増補版。ZINEの内容はほとんどそのまま、新たにエッセイを3本、ブックガイドを4本追加。
日に日に苛烈さを増すトランスジェンダーに対する差別・排除言説。現実に即さないトランスジェンダー像が広められ、恐怖と不安が煽られる。
本書は、そうした現状に抵抗を示すべく刊行された。複雑で多様な個々人の声、現状に対する抵抗言説を、読みやすい長さで多数収録。巻末には映画・ブックガイドを掲載。トランスヘイトの嵐に抗うために、まず手に取りたい1冊。
(現代書館のサイトより)
[目次]
はじめに / 水上文
エッセイ
三木那由他 / くだらない話がしたい
ただの沼 / べつの言葉で
青本柚紀 / クィアな自認の時間性——あなたにそれが届くまで
山中千瀬 / 言葉がほしい
さとう渓 / トランスジェンダーは難しくない
水上文 / シスジェンダーとは何か
かがみ / 「キラキラしたトランスジェンダリズム」ってなんですか?
福永玄弥 / わたし(たち)は忘れない
高島鈴 / その声には応答しない
近藤銀河 / シスターズへ
堀田季何 / メモ・ノワール
榎本櫻湖 / 声について
山内尚 / 熊で鹿で兎でそして
呉樹直己 / セックストイと自炊飯
清水晶子 / 背を向けて、彼方を見つめて、向き合って
岩川ありさ / 雑踏の中でも見つけられる
釘宮もみじ / 身体と知を売ることについて
吉野靫 / ご機嫌いかがですか
周司あきら / 共犯者
児玉美月 / 世界のトランスジェンダー映画5選
共にあるためのブックガイド
水上文 / 私たちの問題——「トランスジェンダー問題」を捉え直す
中村香住 / トランスジェンダーとフェミニズムの共闘点
近藤銀河 / ハンマーの共鳴音を探る——トランスジェンダー差別の批評のために
青本柚紀 / 割り当てられた性を出てゆく経験としてのトランス
青本柚紀 / Aセクシュアル・Aロマンティック・Aジェンダー——こうしてあなたたちは疎外の夜をつくる
高島鈴 / “自然”を語る新しい言葉
水上文 / 奪い返し、問い返す——「性同一性」をめぐって
周司あきら / トランスジェンダーの仲間と再会する