書肆侃侃房
2022年5月1日 第1刷発行
四六判 / 256頁
この日記だって、そうである。つねに言葉と立場とを気にしながら、時としては昼と夜とを入れ替えながら、虚と実とを鑑みながら、おそれながらも慎重に、つむぎはじめている。できるだけ平凡な言葉を、決して平凡には打ち上げないようにしようと試みている。
——言葉における内野飛球 / p38より
水。もちろん、冷たすぎない。
それでいて、朝を気づかされるのには、じゅうぶんの、透明度。光度。
——朝の描出 / p68より
それでも読むという行為、そして話すという行為は、それだけで自立した反抗なのだということを、ひとり静かにわたしはここに書いてみる。そしてわたしはこの文章についても、もうそろそろ終わらせようとしている。そのとたん脳裏の雨音は止んで、遠くからかすかに祭囃子が聞こえてくるような気がする——
——雨宿り ⅲ / p205より
コロナ禍に≪二つ目≫となった。
ぽっかりと空いた時間に、ぽつりぽつりと紡いだ言葉。
これは、ほんのひとときの雨宿りの時間なのかもしれない。
東京郊外で暮らす若手噺家の2020年4月~2021年5月の日々を綴った日記文学的思索集。
(帯文より)
[目次]
汀日記
汀日記序文
言葉の砌
雹 ⅰ
「雨宿りノート」のはじめに
言葉における内野飛球
薄緑色の引き換え券
海上を渉る部屋
日々の露光
初台へ
朝の描出
棒つきのお菓子
万年筆
雨のあさくさ
雨宿り ⅰ
晴れて雲間
単純な願い
雨宿り ⅱ
真昼の海獣
カルピス
踪跡のようなもの
帝國絲業旧工場跡地
phosphorescence
活字の夢
夜の透明な微粒子
間に合わせ
おまけつき
消去・チョーク・石
原画展
束の間の帰郷
氷室守
そして、むくわれた日
アイン、ビア、ビッテ
沈没船とアルバトロス
獺
冬の日の郷土史家
「風紋」回顧
令和誕生
雨宿り ⅲ
冬籠り
アルファべート / Somei-yoshino
迷路と現状
五月某日
文学見本市と二冊の本
雹 ⅱ
この日々の終わりに
落語と文芸のみぎわで
付録
ちいさな赤いつながり
俳句 (『言葉の砌』より)
単行本のためのあとがき