平凡社
2024年9月20日 初版第1刷発行
四六判 / 264頁
企業文化などを調べる人と結婚事情を調べる人とでは、欧米諸国や他の外国と比較したときの日本の印象がずいぶん違うだろうと思う。終身雇用を基本としていた日本企業は「社員は家族」なんて言って実に情に厚い文化を根付かせるくせに、実際の家庭の中では「家族は社員」と言わんばかりにそれぞれが稼ぎ頭や家事担当などのロールをそつなく演じていて結構ドライ。
——序章 たかが愛人の戯言、それとも / p12より
よく考えてみればすぐにわかることだが、彼らの、安定した家庭は欲しい、でも刺激的な夜も欲しいという行動は、他人に犠牲を強制している。単に時間だけを考えても、妻が自分と過ごす時間を奪って愛人と会っているわけだし、愛人が他の男と出会う機会を奪って自分に付き合わせているのだ。もし彼らが何かを犠牲にしたり、そのために弛まぬ努力をしたりすることを、さらさら考えてもいない場合、彼一人だけが、何一つ不満のない生活を送り、そのために少なくとも二人以上の人間が、不満のある生活を、彼が原因で送ることがある。
——第二章 絶望の不倫報道 / p105より
とはいえ恋愛感情のように起伏の激しいものを当てにして選びとるその関係は当然、時間の経過とともに変化していくのが自然であるし、人の気分や欲望や衝動が、社会を円滑に動かすための便宜的なユニットの中に収まるわけがないし、結婚したからといって恋愛における不安や不足が緩和されるわけでもないし、むしろ簡単に抜け出せないような関係の不自由さとそれでも埋まらない孤独の狭間で長く苦しむ可能性だって大いにある。だからこそ、何かしら切実な理由をもって、結婚の形を変えたり、結婚の外に魂を逃したり、結婚から脱却したりしながら、人は愛や生殖や責任や社会生活と、自我や欲望とのバランスを取ろうともがくのかもしれない。
——終章 この結婚生活の片隅で / p256より
結婚制度の限界に 窒息しそうなすべての人へ。
加害なき不倫は可能か?
世間を敵に回しても緊急事態でも
やめられない営みの文化的、衛生学的考察。
——島田雅彦
断罪も美化もしない。
「不倫」に向けた眼差しがここまで
あたたかい本を読んだのは初めてだった。
——紗倉まな
一夫一妻制(モノガミー)を問い、不倫について考えているうちに、いつの間にか既婚者になっていた作家による、結婚の外側と内側から見た不倫考。
(平凡社のサイトより)
[目次]
序章 たかが愛人の戯言、それとも
第一章 不倫、愛人、純愛
第二章 絶望の不倫報道
第三章 婚外恋愛の現在地
第四章 女性作家の描く結婚の限界
第五章 愛人の本懐
終章 この結婚生活の片隅で
参考文献一覧
歌詞引用楽曲一覧