発行 / twililight
2023年12月13日 初版第1刷発行
四六判 / 208頁
この本は、まるでそれがほとんど神さまか何かみたいに、愛し、頼り、信じ、救われ、ときに傷つき打ちのめされながら、言葉と一緒に生きてきたわたしの、なにかとさわがしい心の記録だ。またそれは「言葉とわたし」がどんなふうに変化してきたのか、もしくは変化していくのかの考察でもあった。「だめ、できない」という言葉のうしろで縮こまっていたかちこちの体を、「だいじょうぶ、だいじょうぶ」となんとかなだめて引っ張りあげていくような。
(…)
「だめ」が「だいじょぶ」に移り変わるまでの長い道のり。いくつもの時を、過去を、思い出をまたつむいだこの長い長いテキストの途中で、あなたとも見えない手をつなげることを願って。
——まえがき / p9より
たぶん大切なのは、これまで何歩歩いたのかでも、どれだけ距離を縮めたかでもないんだろう。ほんとうに大切なのは、わたしがいま、ちゃんとわたしのまま歩いているか、たぶんそれだけなのだ。どれだけ速いのかでも、どこを目指しているのかでもなく、いまのわたしが、ここで、どんなふうに歩いているのか。どんな過去を、どんな感情を、どんな希望を持ちながら、いまこの瞬間を歩いているのか。そのまわりには誰がいる?どうしたら一緒に歩いていける?互いを互いに引き込みながら、それでもちゃんと、わたしとあなたで。
——03 ちゃんとひとりでみんなで一緒に / p45より
きっとわたしは、わたしというものは、こんなふうに出会ったすべての人たちとの関係とともにつくられているんだろう。恋するわたしも楽しいわたしも、意地悪なわたしも怒れるわたしも。親になったわたしもそう、親じゃなかったわたしもそう。過ごした時間が何十年でも、もしくはただの通りすがりでも、すでに忘れてしまっても、とにかく出会った人のぶんだけ、わたしがいる。
——12 壁の花ではなかった / p191より
2010年よりパーソナルな語りとフィクションによる救いをテーマにしたジンを定期的に発行しつつ、言葉を使った作品制作や展示も行ってきた翻訳・文筆家のきくちゆみこ。 twililight web magazineでの連載をまとめた初めてのエッセイ集。
書籍化にあたって、各章ごとに「アフター・トーク」を書き下ろし。自分の文章に再会しつつ、副音声的なつっこみを入れることによって、過去の解釈を変えてだめをだいじょぶにしていく練習になる。 より楽しく、読み応えのあるものになりました!
本の内容に寄り添った素晴らしい装画は前田ひさえさんによるもの。カバー、カバーをとった表紙、本文まで、きくちさん、ひさえさん、そしてデザイン・横山雄さんの気持ちがつまっています。
(twililightのサイトより)
[目次]
まえがき
01 大地でしっかり
02 自立、もしくは複数の顔との出会い
03 ちゃんとひとりでみんなで一緒に
04 わたしにとってのわたしたち
05 心の底
06 ビー・ヒア・ナウ
07 完璧なパフェ
08 鎮痛剤と押し寿司
09 海のおうち
10 熱の世界
11 自分の薪を燃やす
12 壁の花ではなかった
あとがき