発行 / 七月堂
2023年6月30日 発行
四六判 / 88頁
核心すれすれのところに刃を入れながら
むき出しになっていく桃の果肉に
思うまま指を絡ませるのは
この季節との約束事のように思われる
皿にたまった匂やかな朱鷺色のみずうみを
ちゅっと飲み干したあと
無残に折り重なった皮も
種のまわりの血管みたいな繊維も
二重三重に封じてさっと手を洗い
何もなかったふりをする
翌朝ごみ集積所にポイと捨てたあと
いつものように二段飛びで階段を駆け上がって
誰にも会わずに部屋に戻ることができたら
わたしの勝ち
——秘めた果実 / p63より
女の体をもって生まれてきた以上それにまつわる経験や感情が塵となって積もり、時には噴出したりさみしく漂ったりするわけです。ここではそんな地層から生まれた棘や毒、伏せた眼差しを主に集めています。
——あとがき / p80より
[目次]
Ⅰ
研磨せよ乙女
アーロン Aaron
Aeron(English Version)
真夜中のチェリーブランデー
女風呂
似非ルンバ
女の矜持
Ⅱ
水島上等兵の妻
化身の巣
熾火の家
彼女の劇場
渡守が言うことにゃ
Ⅲ
ひよどりの妻
沈丁花の門
水脈
プレコロナを嗅ぐ
秘めた果実
蔦の家
情念
ともしび
気をつけて(水際)
弱い花
あとがき
初出一覧