2024年11月26日 第一刷
A6判 / 114頁
アーティスト・小指さんによる、2024/5/28~2024/10/19の断片的な日記に、ミニエッセイの付されたちいさな本。
とうとう偶偶放浪記校了。すごい生活だった。毎日十二時に隣町の喫茶店へ行って、漫画の構成を考えて、西友に寄って半額の惣菜を買って、歌いながら家に帰って、家に着いたら朝五時位までぶっ続けでペン入れをする生活。背中が丸まりすぎて、ダンゴムシになりそうだった。
マンガが面白く描けなかった時は苦しくてたまらなかったが、校了直前は絶望したり高揚したりと、一日の時間量を超えた時間を体感できた。(…)
この日記は今、近所の団地の空き地で書いている。ベンチには私だけ、目の前には立派なスダジイの木があって枝葉がさわさわと揺れている。昨日はあんな炎天下だったのに、今日は曇り空で涼しい。人の気配はせず、風が通っていくのがわかる。今、この町で一番のんびりしているのが私だ。
——2024/6/26 / p5より
監督が、生前の美津さんと女子会をした時「良いものを作りたいと思ったら、自分の中にいる膝を抱えて泣いている少女を大切にして作りなさい」と言われたそうだ。それを聞いた時、美津さんの集大成の言葉だなと涙が滲んだ。
最近しょっちゅう涙腺が緩んでいる気がするが、泣くと眼球が熱いお湯に浸かったように脳まで緩んで気分がいい。「あー、だから風呂って入った方がいいんだ」と納得した。そういえば今日の私も長く風呂に入ってなかった。だから調子が悪いのか。
——2024/9/26 / p50より
私の文はあけっぴろげすぎると、時に不評。でも、鯵の開きのように内側を曝け出さないと呼吸困難になってしまう人生の境地というものがあって、私はもうそこへ行ってしまったのだと思う。時々そんな姿を呆れられたり、否定されるけど、きっとそういう人たちも同じ状況に陥ったらわかってくれると思う。孤独な人ほど、理解し難い行動をとる。
これ以上、隠し事を増やしたり誤魔化すような生き方をしたら死んでしまう。だから、ごめんなさいと心の中で謝りを置いてから堂々と書いている。
——不明日 / p79より