発行 / 七月堂
2023年3月25日 発行
A5変 / 114頁
2017~2022年頃までに書かれた詩が収められています。
そんなものはないと知るわたしの脳と
豊かな感受体のあいだで
ほんものらしく
夏の始まりの夜の
香りでよそぐ
月明かり
ぼんやり蒸気をあげて
世界のうらがわで
草の青い影を踏みながら
わたしたちがつくるのは
世界の細密な具体で
善良さではない
あらゆるものが役に立つし
どんなものも
同じくらいにしか価値がない
——帰郷 / p94より
もっといい人間にならなければ、恥ずかしくない思考と行動をもつ者にならなければ、と思うのですが、一方で、それに激しく反発する自分が、わたしに詩を書かせていました。汚れや、醜さを無視するな、と内なるわたしは、かつてないほど主張していました。品行方正でいることが何だ、結局それは自分の保身のためだけじゃないか、悪を認めろ、鬼を認めろ。それらはすべて存在として善と平等だ。なにもかもはあっていい。それとどういう関係を結ぶかが、問題なのだ。
——あとがき / p110より
[目次]
秋と空虫
壁隣の虹
雲摺師
油山迷歩
身がわり
宿願
月明かり
神経と光線
夜来雲
花畑
瑠璃
鬼たち
三隈川
蓮池
代謝
夏越祓
大宰府
鵺
祝い鈴
早春賦
冬祭の森
わたしの犬に
白椿
青草と地平
帰郷
霧中
秋の印
夜は晴れ
夕靄
あとがき