著者 / 暁方ミセイ・菅啓次郎・大崎清夏・石田瑞穂
英訳 / ジェフリー・ジョンソン
発行 / 左右社
2016年5月25日 第1刷発行
B6判 / 112頁
実力派の詩人たち4人が1年間にわたり紡いだ詩行。季節と土地と感情のゆるやかな起伏をはらんだ充実の連作52篇。英訳を添えたバイリンガル版として刊行します。
連詩のルールは、
1. 形式はソネット
2. ひとつ前の詩に描かれた風景を意識する
3. ひとつ前の詩の最後の連から言葉をとって1行目を作る
4. 五と七のリズムを意識する
そして、順番は暁方ミセイ→管啓次郎→大崎清夏→石田瑞穂。この詩人たちの冒険を、どうぞお楽しみください。
(左右社のサイトより)
まぼろしの道に
立ちすくむ
足は
てのひら
日が沈み
星が出て
やっとひらく
紙と花
呼吸は
浅く
整っている
(私の瞳を
鏡に使って)
反射するのを待っている
——大崎清夏 / p8より
まいまいず、まいまいず、
武蔵野は雨降り土の匂い
まいまいず、まいまいず、
流れて巻かれて閉じこもる
六月の東アジアです
亜熱帯です
緑がむんむん熱を吐き出し
生殖する虫が花の中心で黄色くなる
繁茂する草木の下の
小さい人間
こちら東アジアです、どうぞ
はい、成層圏
こちら成層圏、晴天です
眼下に渦を巻く緑が見えます、ここはまだ一人ぼっちです
——暁方ミセイ / p60より
東京の路地や記憶のなか、山の緑や湯けむりや美味しい酒のもたらす酔い心地のなかへも旅しながら、詩は編まれた。その間、この小さな国でも噴火や洪水が相次ぎ、激しく迫ってくる気象に私たちは曝されていた、きっとその感じも編みこまれているはずだ。
環境学では人新世(anthropocene)ということが言われて、日々の瑣末な地形と気象の経験においてさえ、人間なんてうかうかしていたらすぐ滅びるだろうと、笑いごとでなく思えてくる。でも詩人は、そんな世界でも言葉の遊びにしてしまえる。その呑気で贅沢な作業が、晴ればれと愉しかった。
——あとがき / p109より