発行 / 大和書房
2024年12月25日 第1刷発行
四六判 / 336頁
「圧倒的な面白さ!」と話題の人類学本、爆誕!
山極壽一氏、松村圭一郎氏、中島岳志氏、小川さやか氏…各界より大推薦!!!
「理解不能な出来事を目の前にすると、相手を否定して自分を守ろうとしてしまう。しかし異質なものを、異質なものとして見ていても何も生まれない。偏見や独りよがりな思い込みではなく、「知」に「血」を通わせて、人と接していきたい。ずっと興味があった人類学の世界。その一歩が踏み出せそう!」
——ジュンク堂書店 藤沢店 小山さん
白と黒ではわけられないこの複雑な世界で、他者とともにあるために。今こそ、僕たちには人類学が必要だ。
(大和書房のサイトより)
僕は席を立つと、彼の剣幕を恐れる気持ちをはるかに凌駕する怒りの気持ちで、「僕はあなたの自慢話を散々聞いた。とても不愉快な時間だった。だからここの支払いは、世界に富をもつあなたが払ってください」と言って、震えながらその場を去った。その背中に向けて、バラモン2号は怒りにまかせて吐き捨てた。
「いいか、チャイルド。お前が私に発した侮辱的な言葉は、私は一生忘れることがないだろう。これから私は、世界中のありとあらゆる不幸や苦しみを集め、お前にのしかかるように祈るつもりだ。わかったか、チャイルド!せいぜいみすぼらしい残りの人生を楽しむことだ」
そして僕は、世界中の不幸と苦しみを背負った、呪われた人間になった。
——第3章 「孤独」に突き動かされる日々 / p79より
そして僕は、この旅でさまざまな刺激を一身に受けながら、それを拒絶したり、引き受けようと躍起になりながら、自身の感覚や発想がゆらいでいく感覚を覚えていた。僕は、壊れることはできなかったが、ゆらぐことはできたように思う。さまざまな考え方や異質な世界観を少しずつ引き受けながら、僕の中で頑なに凝固していた価値観が浮かび上がってきた。それを、少しずつ整理し、捨てるものは捨ててきた。自分を束縛したり苦しめたり、自分の行く手を阻もうとするような考え方は、手放そうと努めた方がいいに決まっている。価値観や世界認識の断捨離だ。
——第7章 「あわい」に生きる / p210より
本書のキーワードは「ヘタレ」と「ゆらぎ」です。簡単にいうと、ヘタレているからこそ、ゆらげた、ということになりましょうか。そして本書が強調してきた「ゆらぎの世界」は、きっと僕らの生き方や人間関係、社会のあり方にとって豊かな意味をもたらす、重要な領域になってくるのではないか、という確信を持っています。それには、僕らはもっと「ヘタレ」に対する許容力を高めなければいけないように思います。文化人類学という学問は、まさにこの「ヘタレ」た部分をコアな価値として捉え、他者との邂逅が生み出す齟齬に注視し、その交感が生成させてしまう世界に希望を託し、だからこそ人間って面白い!と言ってのけることのできる学問であってほしい、と考えています。
——あとがきにかえて——旅の終わりに / p329より
[目次]
プロローグ
本書について、または「ゆらぎ」のフィールドへの誘い
第一部 ゆらぐ自分
第1章 旅立ち
第2章 「何者かになる」ってどういうこと?
第3章 「孤独」に突き動かされる日々
第4章 黄金の街で出会った青年
第二部 褐色の世界で見たもの
第5章 沙漠で生きるということ
第6章 超自然的世界への入り口
第7章 「あわい」に生きる
第三部 ゆらぎの世界
第8章 居場所を探して
第9章 感謝のない社会
第10章 所有をめぐる問題
第四部 僕がゆるせてしまった世界
第11章 交差する人生
エピローグ
あとがきにかえて——旅の終わりに