訳者 / 柄谷行人
発行 / 筑摩書房
2015年6月10日 第一刷発行
A6判 / 192頁
大学の教壇に立ちながらも若き日から従事してきた港湾労働を続け、「沖仲仕の哲学者」と呼ばれたホッファーによる、地に足の着いた社会批評集。
現代という時代は多くの問題を解決してきたように見える。従属を強いられた国や人々に平等な世界への扉を開き、飢餓や貧困を減らす、といったように。しかし掲げられた目標が望ましいものであった場合でも、急激すぎる変化は大きな副作用を引き起こす。ホッファーの見るところ、それがナチズムでありテロリズムであり、経済至上主義であった。
社会や人心を冷静に分析し、世の中と、権力と、しなやかに向き合う方法を、省察の人に学ぶ。
(筑摩書房のサイトより)
余儀なくされた無為と創造的エネルギーの発散とが結びついているという例は、古今を問わず他に幾つも浮かんでくる。ツキュディデスは情熱的な将軍であった。作家になりたいなどとは思っていなかった。戦さで兵士を指揮したかったのである。しかし戦さに敗れたあと彼は追放され、他の将軍たちが戦争をするのを眺めて切歯扼腕するほかはなかった。そこで彼はかつて書かれた中で最もみごとな歴史の一つ、『ペロポネソス戦争』を書いたのである。
——2 オートメーション、余暇、大衆 / p41より
人間は自然に助けられてではなく、自然にさからって今日のようになったのだ。人間化とは自然からの離反、自然を支配する厳しい必然性の下からの脱出を意味したのである。そうしてみると、非人間化とは自然による人間の馴致ということになる。それは自然の回復を意味するのである。人間化が人間は未完成で欠陥のある動物だという事実からはじまったということは意味深長である。自然は最初から人間をけちくさく扱ったのであった。
——5 自然の回復 / p107より
彼は政治的に群れ集うことを批判したが、別に孤立して生きていたのではない。たとえば、彼は沖仲士(港湾労働者)の労働組合リーダーであった。また、彼は知識人を批判したが、反知性主義ではまったくなかった。その逆に、知性によってしか権力に対抗できないことを説いたのである。彼は沖仲士らにも本を読むように勧めた。
——ちくま学芸文庫版への解説 / p182より
[目次]
序
1 未成年の時代
2 オートメーション、余暇、大衆
3 黒人変革
4 現代をどう名づけるか
5 自然の回復
6 現在についての考察
E・ホッファーについて(柄谷行人)
ちくま学芸文庫版への解説(柄谷行人)