発行 / 書肆侃侃房
2023年11月13日 第一刷発行
四六変 / 144頁
束の間生かされているこの地球上のどこか。
天体、火、水、樹、草、鳥、そして猫。
音楽に繰られるように歌は生まれる。
【栞文より】
水と火が、共にメタファーとなることを拒絶しつつ、互いに支え合うようにして併存する。金川さんはなぜ、こうした特異な世界を構築するに至ったのか。その謎を解く鍵は、金川さんが短歌から離れた二十数年にあるような気がしてならない。
——三田三郎
遠い過去か未来の光景か、地球か別の惑星なのか。それすらも定かではない、どこでもなく、どこでもあり得る場所で、語り手は自身のかすかなライフラインの痕を探すように言葉を集める。そして水や火、木、風、地、ひかりという人間が所有できない地上の原初的な現象を介して、それらに無意識に包まれる人という生きものの命の姿にも触れてゆく。そこで語るのは誰なのか。わたしか、それとも。
——峯澤典子
感性と資質を自由に開放すればよかった第一歌集とは異なり、目の前にあるのはすでに第四歌集である。堆積した時間を反映して言葉の組み立ては屈折したものになってゆく。午後の強いひかりに照らされて言葉は対象の深部まで映し出してしまう。金川の歌には音楽あるいは楽器にたいする偏愛がベースにある。奏でられる言葉の音楽を楽しみたい。
——小池正博
(書肆侃侃房のサイトより)
耳を澄ます勇魚 瞑目するスワン わたしの春は白亜紀の遠火事
静止する蒼穹と雲 樹の繁みのどこかに灯された窓をさがしてる
沼のことばで語るしかない枯れ葦を敷いてねむれ ミザントロープ
かなしいという言葉の皮膚を捲っているとどかないところがあるどうしても
肉球がふれてゆくのはそうきっとミとファの間の黒鍵だろう
その星のことばのやうに光るまで待ちをりひとり屋上にきて
——本書所収の歌より
[目次]
Ⅰ
午後からのこと
燃え上がる図書館
Ⅱ
夢巨頭
帰還兵
青空の鏡
ひかりの墓
哀しい音が降ってくる
Ⅲ
樹の音楽
冬のファルセット
水のゆりかご
風になる
アステリズム
Ⅳ
たてがみの時間
火のかたち
見知らぬ扉
百夜の果て
青ふかき河
永遠の一日
秋庭歌