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平凡社
2021年2月10日 初版第1刷発行
B6変 / 224頁
知と文芸を横断するシリーズ、第4期刊行開始!
写真家、探検家、そして文筆家としても知られた筆者の、自然への畏敬あふれる名篇集。
(平凡社のサイトより)
夏の北極圏は、時間というものがあまり意味をもたない。太陽は頭の上をまわるばかりでまったく沈まないからだ。一日の区切りをどこにつけていいのかわからなくなってしまう。毎日日記をつけていないと、カレンダーを見ても該当日を見失ってしまう。こんな生活の中でさえ、時計を見て時間をたしかめ、カレンダーを気にしている。もし人間の一生がカレンダーで区切られるものならば、七十歳まで生きるとして七十冊のカレンダーだ。つくづく時の流れの奇妙さを思った。
——カリブーを追って / p73より
いつかこんな話を聞いたことがあった。変わりゆくアラスカをめぐり、アラスカ原住民とアメリカ政府との間で開かれたある話し合いの席上でのこと。一人のエスキモーの老人がこんなことを言ったという。
「わしらは自分たちの暮らしのことを、自分たちの言葉で語りたい。英語では、どうしても気持ちをうまく伝えられん。英語の雪はsnowでも、わしらにはたくさんの雪がある。同じ雪でも、さまざまな雪の言葉を使いたいのだ」
——雪、たくさんの言葉 / p108より
この旅は、僕にひとつのことを教えてくれた。それは、こんな地の果てと思っていた場所にも人の生活があるというあたり前のことだった。人の暮らし、生きる様の多様性に魅かれていった。どんな民族であれ、どれだけ異なる環境で暮らそうと、人間はある共通する一点で何も変わらない。それは、だれもがたった一度のかけがえのない一生を生きるということだ。世界はそのような無数の点で成りたっているということだ。
——シシュマレフ村 / p153より
[目次]
クジラの民
木の実の頃
ポトラッチ
*
カリブーを追って
カリブーフェンス
新しい旅
*
雪、たくさんの言葉
白夜
ケニス・ヌコンの思い出
シシュマレフ村
家を建て、薪を集める
*
トーテムポールを捜して
ワタリガラスの家系の男
一万本の煙の谷
約束の川
水の惑星
著者略歴
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