発行 / KADOKAWA
2025年6月12日 初版初刷発行
B6判 / 218頁
「——なあ、ほんまに誰かそこで、わたしの話、聞いてくれてたりする…?」
——名前を忘れてしまった多聞(たもん)の友達。
話し相手になってと頼んできたのに、
わたしにばかり質問してくるきみに——…
ずっと会いたかったような……
こんな気持ちになるのは、なんでなんやろう。
★
他の人には見えない、人ならざるものとの会話を楽しむ、妙な大人、“多聞”。
そして、二人の女と暮らしている子、“内日(うつい)さん”と、自分の名前を忘れてしまった不思議な仔、“多聞の友達”。
女性同士の恋愛を友情と呼ばれ、なかったことにされてきた親達と、本当のことをまだ話せないでいる、わたし達。
時代を超え、国境を越え、どこかにいて、どこかにいた、三人だったり四人だったり、恋人だったり家族だったりする、さまざまなセクシュアル・マイノリティの親子達。
人と人が、普通で、時には最悪で、でもハッピーで、退屈でありきたりな毎日の話を、誰にどんなふうに話せばいいのかわからないと思っていた話を、語り合う。
恋愛をする人も、しない人も、わからない人も、決めてしまいたくはない人も、ただ覚えていてほしい、忘れないでほしい、ひと夏の大阪の物語。
(KADOKAWAのサイトより)
小説でも映画でも映画でも…
女同士で…最後まで死なへん二人を作りもんの中で探すのも難しかったのに
クラスメイトの親が中年のおばちゃん同士で
二人は恋人同士やって…
一緒に暮らしてて自分と同いの子どもまでおんねんで?
なんやSF映画でも観とるみたいで——
(…)
もっとずっと遠い…
突然…何十年も何光年も…想像もできへん遠い未来に来たような…そんな気いしてん——…
——p55より
嘘は上手になるんやないよ
何度も言うてるうちに
ほんまのことがもっと言われへんくなるだけ…
(…)
何年も何十年も経ってどんどん誰にも話せんくなって…
もう自分でも——…
ほんまの自分がわからんくなってまうだけやねん
——p83より
自分と似ていて、でもまったく似てなくて、友達にはなれそうにないし、なってくれないかもしれないけれど、風邪が強く吹く日の夜のベランダで一晩中でも語り合いたいと思えるような誰か。物語の外に、世界のどこかに、すぐ隣に必ずいる誰か。この漫画の中に登場するキャラクター達がわたしにとってそんな誰かであったように、この本を手に取ってくださった方にとってもいつか会いたいと願う誰かであったなら、何よりも嬉しく思います。
——あとがき / p213より