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君の六月は凍る / 王谷晶

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発行 / 朝日新聞出版 2023年6月30日 第一刷発行 四六判 / 184頁 三十年前に別れたままのきみが凍死体となって発見され、わたしの中であの町での思い出が甦る—— 文芸界最注目の新鋭が、前代未聞の手法で叙情的に紡ぐ、切ない恋情。貧困・警備員オタク女生活を半私小説的に描く「ベイビー、イッツ・お東京さま」を併録。 「君の六月は凍る」——30年前に別れた君が凍死体で発見されたと聞き、わたしはあの町での君との記憶を呼び覚ます。鶏小屋の前で、私たちは会っていた。お互い孤独だったわたしたち、初めて訪ねた君の家にはZがいた。学校の鶏小屋で生まれたばかりの鶏の子供を、君はある日連れて帰った。「鶏に名前はいらない」しかしある日、養鶏場で鶏の病気が発生する——わたしは忘れない、別れの時に、君があげた叫び声を——。 名前につきまとう性別のニュアンスをあえて削ぎ落とすという試みを、叙情豊かに描いて絶賛を浴びた傑作。 (朝日新聞出版のサイトより) 君の六月は凍った。 わたしがそれを知ったのは七月の初めで、真夏みたいに暑い日でした。久しぶりに君のことを思い出しました。ちゃんと数えてみたら、君の顔を最後に見てから三十年も経っていました。とても長い時間です。ちょっと驚いてしまった。君もこのことを知ったら信じられないと言ったでしょうか。それとも君は、きちんと三十年という年月を一年、一年と確かめながら過ごしていたのでしょうか。 ——君の六月は凍る / p7より 君は手招きをし、わたしを屋上に通じる階段の踊り場まで連れていきました。ドアは施錠されていて外に出ることはできないけれど、静かで、誰も通らず、身を隠すことのできる場所でした。なぜ君がこんな場所を知っているのか、訊く必要もありませんでしたね。君もその場所を必要としていたのだから。 ——君の六月は凍る / p71より 毎月の携帯代払うのもギリギリの今の状況じゃ、スマートフォンなんて夢のまた夢だ。実家から持ってきたパソコンも、もう七年も使ってる。クラッシュしてないのが奇跡。クレジットカードは持ってないし、作れないし、もしパソコンがだめになったら現金一括で買うしかない。それを思うと心底ぞっとした。信仰とか、神とか、どうでもいい。本当にどうでもいい。そんなもの私を苦しめもしないし救いもしない。私は私の祈りのために、働いてアダ剛SSを書く環境を手放さないようにしなきゃいけない。苦しみなんて意識するもしないもねえよ。人生標準装備だろそんなもん。どうでもいいんだよ、私の苦しみなんて。そんなものに向き合う暇があったら、一文字でも多く萌えを語る。 ——ベイビー、イッツ・お東京さま / p123より [目次] 君の六月は凍る ベイビー、イッツ・お東京さま

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