発行 / 講談社
2026年1月27日 第一刷発行
四六判 / 288頁
デビュー作『月ぬ走いや、馬ぬ走い』で群像新人文学賞と野間文芸新人賞をダブル受賞した大型新人が、圧倒的な筆力で描く衝撃の長篇第一作!
暴力が支配する世界に、「ヒーロー」は現れるのか? 戦争の傷が刻まれたこの島で、新しい地図を描くための「戦い」がはじまる。
きみは沖縄に生まれ育ち、ウルトラマンに憧れるオタクになった。小中学校とエスカレートする「いじめ」を生き抜いたきみは、この島を分断する「壁」に向かって、ある「計画」を実行していく——。
沖縄の今を生きる少年少女と、80年前の戦場を生きた少年兵たち。ともに白紙のような彼らを呑み込んでいく巨大で残酷な暴力に、どう立ち向かうのか?現代と戦中戦後の時空を交差させて描く、鮮烈な青春小説にして、新しい世界文学の誕生!
(版元のサイトより)
生まれてから、まずどんな朝を記憶しているだろう。きみにとってのいちばん初めの思い出の朝は、やはり大伯父さんの家の二階で、DVDやVHSテープを東芝のプレーヤーに挿入している朝だ。カーテンはひらかれている。ベランダに通じている廊下から、風に乗って天日干しにされた洗濯物のほのかな柔軟剤と、かわきつつある布のにおいがかおってくる——
——p11より
英語を話し、日本語も、沖縄語も話して、それからかつては漢文も学んでいたのだろう、この島は? それじゃあ、きみらは、きみは、一体何者なんだろう? そんなにもアイデンティティがこんがらがったこの地で、どうしてわざわざ祖国に復帰したいんだ? その上で、きみらはひとり立ちできないティーンみたいに、日本ともども連邦の傘の庇護のもとに入りながら—— 現にきみは、こうして基地にチャーターされて、生きているじゃないか。
それこそ、度重なる占領が生みだしたものじゃないか!
——p192より
ぼくが描こうとしている線は絶対にそういう風な使い方をするものじゃないし、するものか—— きみはあくまで、そう頑として譲る気もない。
——p219より