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発行 / 左右社
2026年7月30日 第一刷発行
四六判 / 216頁
『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』(河出書房新社)や『きみだからさびしい』(文藝春秋)など、次々と話題作を刊行し、2026年にデビュー10周年を迎えた作家・大前粟生の最新作。
傷つけず、傷つかず、私が私でいるにはどうしたらいいんだろう——
「わかんないんだよ、恋愛感情とか、そういうのさ」
「嘘ばっかだ。だって先輩、普通そうに見える」
「普通ってなに」
「ほんとに恋とか好きとかわかんないんだったら、もっと苦しそうにしててよ」
「はああ?」
恋愛がわからないことに、そういう話題に乗れないことに、引け目とさびしさを感じながら日々をやり過ごす高校2年生の夏莉(なつり)。そんな夏莉に思いを寄せる、幼馴染のみお丸。みお丸に告白しフラれた後輩のなずなは、夏莉のことを敵視するようなそぶりを見せるが……。
そんななか、「男として」消費される立場に疲れ、夏莉のクラスに転校してきた活動休止中のアイドル・カジュ。教室でコンパスを振り回す事件を起こし、3年になってから学校に来るようになった近田。近田を毛嫌いし、己の正義感を振りかざす田井中。
同じクラスにならなければ交わることのなかった高校生たちが、もがき、揺れ動き、葛藤する姿を描いた傑作青春群像劇!
(版元のサイトより)
あの娘ってああだよね、彼ってこうだよね、と話すことは誰にでもある。でも、ああがあの娘のすべてじゃないし、こうが彼のすべてじゃない。それが当たり前のことであるのと同じに、「恋がわからないこと」が私のすべてじゃない。わからないってことをいうために恋のことを考えたり悩んだりするけど、別に恋が私や私みたいな人たちの中心にあるってわけじゃない。
——p3より
「みお丸もそっち側かあ。まあ、そうだよね。私とは違うよね」
「そっち側? 違うって、なにが?」
「私とみお丸は違うんだね」
「そんなの、当たり前だろ」
「そういうことじゃないんだ。ごめんね、よろこべなくて。私、いまからこの坂道思いきり駆け下りるけど、気にしないで。それで、追いかけてこないで。蘭丸によろしくね」
——p92より
私はというと、正直なところ、なにか思い出を残しておきたかった。将来というものを信用できないのなら、せめて、いまや過去を充実させたいと思って。
——p155より