©︎2020 Yumiko Kikuchi
170mm×150mm / 190頁
ベンチでシフォンケーキとコーヒー。12時、もうお昼の時間。そのまま川沿いをぐるりとまわって帰宅。わたしだけスーパーに寄って十割蕎麦を買う。
「self-quarantine diary 4/15/2020」p.32より
それにしても、大人になってから「せつない、せつない」と言い合えるような人がいるのはうれしいし楽しいね。せつなさは人と分かち合えば分かち合うだけ、きちんとからだに染み込んでくる。そしてそれはちゃんと肉体にも到達する。胸が痛くてうれしいうれしいと思うのは、幾重にも重なるからだを持ってる、人間らしい行為だなと思う。
「self-quarantine diary 5/16/2020」p.116より
月もわたしもどんどんふっくらしてきてる。今日は早めに寝よう、ネットもやめよう、本を読んで、寝る、寝る、寝る。おやすみなさい、ほんとうはやっぱりまだまだうつくしい5月の夜、ベンチに座って空を見上げたりしたくなる。「月だ!」と声を上げることのくったくのなさ、それと同じくらい、「飛行機だ!」と胸が踊る日もある、そのこと、その気持ちだけは否定したくなくてだからついつい言葉をついやしてしまう。空を駆けるもの、駆けなくてもただそこにあるだけで人をうれしい気持ちにさせるものがある。それから足元にあるもの、たとえそれがアスファルトでも、いい匂いのする刈られたばかりの芝生でも。
どこにいても、星。
「self-quarantine diary 5/30/2020」p.144より
「Inside of Inside is Outside (内側の内側は外側)」。
いつもマントラのように、著者の心の奥底で響いていたことば——「内部の内部は外部である(生物学者・福岡伸一さんの著作「生物と無生物のあいだに」の章のタイトル)」からもらったという題名の日記本です。
2020年4月から6月にかけての3ヶ月間。
感染症による自粛生活の日々が、克明に描かれています。
今日をどのように過ごしたか、という記録に止まらず、自分自身の内側に深く深く降りていき、省み、思索し、思いを巡らせる、壮大で濃厚な手記となっています。
借り物のことばを使わずに、どこまでも自分自身のことばで書かれた文章は、他の誰にも書けない、特別なものです。
豊かなことばと感性と眼差しにじかに触れていると、まったく新しい景色に出会ったような、新鮮でわくわくとした気持ちがします。
とにかく、きくちゆみこさんの文章をたっぷりと、お腹いっぱいに味わいたいときにも最適です。