左右社
2022年6月28日 第1刷発行
四六判変形 / 144頁
——以下、本書所収の川柳より抜粋
もうすんだことと春になったこと
わたくしは拾ったものでできている
空に満月くちびるにウエハース
きんもくせいめいおうせいと目を瞑る
海を描く海と書く 届きますように
無花果と柘榴どちらが夜ですか
くしゃみから雨と梔子は生まれ
うすずみで書かれてあなた夜っぽい
経歴のひとつに雪であったこと
なかはられいこさんの、二十一年ぶりとなる第三句集。
どこまでも清冽な、うつくしい句が並びます。
この句集を読んでいるときの心は、おいしい真水を飲んでいるようでもあり、すきなひとが撮った古い写真を見ているようでもあり、なかば夢を見ているようでもあります。
静かな充足を差し出してくれる一冊です。
一日のなかに、この句の間をたゆたう時間を持つことは、自分をいたわることと同じように思います。
空に満月、くちびるにウエハース、ポケットにはこの句集を携えてゆきたいです。
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出会って三十五年になるのに、川柳がナニモノなのかいまだにわからない。
そんな私にも言えることがひとつある。川柳の「私」は何にでもなれる、ということだ。雪の斜面に立つ鉄塔や、しわくちゃのレシートや、牛丼のすみっこに乗った紅しょうがにだって、なれるのだ。なりたいかどうかは別にして。これからも、どうでもいいことや、くだらないことや、何の役にもたたないことを書いていければいいなと思っている。
「あとがき」 p.143より
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目次
ぼくの女神
無敵
ウエハース
非常口
2001/09/11
狩野派の雲
とと、とと、と
魏呉蜀
なんか、ごめん
終わる平成
式次第
塩、胡椒
解説 無敵のアリス 荻原裕幸
あとがき