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2024年5月5日 第一刷発行
B6変(125mm×182mm) / 196頁
今ここにあるものと、今はもうここにないものが、巡る心をすみかとして、互いに訪れたり、訪れられたりする。
互いの場所から、互いを思い、支えあっている。
それが、私の生きていく世界だ。別れるために人生があるとしても、それがうれしい。
その生を味わうのだ。その生のひとしずくひとしずくをこのひとつ身にあじわうのだ。
——はじめに / p7より
外の世界と思っているのは、じつは私の心のなかのできごとだよ。私の心のうちで起こっているのは、外の世界で起こっていることだよ。内と外はいつも入れ替わっていて、ひっくり返っているよ。それが心をもって生きるということだよ。
——へその緒のさき / p31より
夕食にパックの白ごはんをチンしたのと、油ひたひたのなすの煮浸し、納豆をたべた。島とうふ屋さんでおみやげにした、かりかりの湯葉ふりかけをごはんにかけると、なじみのない塩からさが南の島にきたんだと思わせた。
親指くらいのまだ青い島バナナは、野生の酸味がぴん、と脳にくる。なんとなく買い物かごに入れたよもぎじょうひ餅をあけて、ひとつ口にいれると、もったりしてねむくなった。
嵐はいよいよはげしくなった。ふなかわさんから、さんぽにでてみましたと報告。嵐と乱れあう草むらの動画がついてきた。
部屋はとくとくとしずか。
——こわいという気持ち / p99より
旅行記ではありますが、人は皆ひとりであるということを自分なりに大切にしながら生きていく旅路を書きました。
書くことにより、十代の頃からとけないままでいたことにひとつの光を見つけました。書き終えることができて良かったと思っています。
ゆっくりと景色をみながら土地から土地へ巡りあるいていく旅の道のりのように、これからも読者の方のもとへお届けしていくことができたら。
(著者のInstagram投稿より)
[目次]
はじめに 巡る心をすみかとして
南伊豆 二〇二二年 十月~十一月
山が隠した
すこしのあいだ、眠っている
千年生きる
さいはての町
へその緒のさき
醸す家
尾道 二〇二三年 五月
水を湛える
海が宇宙で、島が星で
へびの眠る
夕日へおちる
タンタワンのよる
巡るのめぐ
持てる愛を
季節がいく
ふたつの島で
あおばに
この星のうなづく
奄美大島 二〇二三年 六月
こわいという気持ち
アダンなるもの
火と文字をわすれて
幹とする
京都、大阪、神戸 二〇二四年 二月
くらげの呼吸
とじこめている
巡礼に似た
ビー玉の目
雪のような雨
博多、うきは、久留米 二〇二四年 四月
アジアの、一夜かぎりの
つらなる山の滴る
燃える水、冷たい火
世界のあとさき
あとがき