other
装画 / さとうさかな
発行 / ナナロク社
2016年8月30日 初版第1刷発行
四六変 / 128頁
デビュー作で中原中也賞を受賞
第5詩集で萩原朔太郎賞を受賞
詩人・三角みづ紀
待望の第7詩集、重版出来。
時折、たぶん旅先から、風に吹かれた木の葉のように届く絵ハガキ、それが私にとっての三角さんでした。
——新川和江
(帯文より)
伸ばしつづけていた前髪を
キッチンの丸机の上にある
鋏で ざりっと切る
伸ばすのには
ずいぶん時間がかかったのに
黒い髪はあっけなく散らばる
何かを変えたいとき
ひとは 動いてみる
何かが変わったとき
ひとは案外気づかないのかも
すっかりと変わることに
まだ躊躇しているわたし
鋏を手にしたまま
前髪しか切れずに
すっかりと変わることに
迷っている
いつか気づくだろうか
変わってから
しばらくして
ようやく
この決断が輝きますように。
迷っているわたしと困っている鋏
ほんのささいなことで
人生は変化したり
しなかったりする
——鋏 / p30-32より
台所で詩を書くことが多い。急ぎのしめきりがない早朝に、食事をしてから食器を洗う。台所の磨り硝子からさしこむ陽光を眺めつづけて、さみしいくらい感情というものがなくなったときに詩が湧き出る。とびきり心が揺さぶられたときではなく、自分という存在が沈黙したときに詩を書いているのだろう。自分という存在が息をひそめてようやく、あたり一面に詩があふれていることに気づくのだと考えて、生活や日常の詩集をつくりたいと思った。
——あとがき / p126より
[目次]
コーヒーカップ
花束
スーツケース
ブランケット
二階建てバス
カレンダー
スープ
鋏
トースト
洗濯機
バスルーム
地図
スプーン
あまいもの
ノート
傘
ピアノ
階段
靴
カーテン
手袋
コート
間接照明
モバイルフォン
ベランダ
手紙
ラジオ
鏡
バスタオル
市場
メール
つめたいもの
ボタン
温度計
フライパン
シンク
あとがき