発行 / 講談社
2024年7月9日 第1刷発行
四六判 / 224頁
第76回読売文学賞(随筆・紀行賞)受賞作!
本を片手に、戦う勇気ではなく逃げる勇気を。
いま、本読みたちにもっとも注目されているエッセイ集。
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軽やかで、優しくて、豊かで、
そしてなんと性根のすわった作家なのだろう。
——川上弘美
遠いところからとても大切な声が聴こえる。
奈倉さんの静かでタフな言葉が、
新しい国境を切り拓いている。
——三宅香帆
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「国でいちばんの脱走兵」になった100年前のロシアの詩人、ゲーム内チャットで心通わせる戦火のなかの人々、悪い人間たちを化かす狸のような祖父母たち——あたたかい記憶と非暴力への希求を、文学がつないでゆく。
「もし本が好きになったら——私たちがその人たちを見つけて、めいっぱい大切にしよう。世界中のたくさんの本を翻訳して、朗読して、笑ったり泣いたりしよう。」
——「クルミ世界の住人」より
紫式部文学賞を受賞したロングセラー『夕暮れに夜明けの歌を』の著者が、言葉を愛する仲間たちに贈る、待望のエッセイ集。
(講談社のサイトより)
「私はあなたたちを見るとき、気をつけてることがあるの。ジャン=フランソワが『フランス人』じゃなく、ジルケが『ドイツ人』じゃなく、ユリが『日本人』じゃないところに、その人の本質があるのがわかってるから。(…)目を見て、その奥になにが見えるか考えながら話を聞くこと。一回じゃわからなくても、なんども話をしているうちにわかってくる。そういう部分っていうのは、見ようとしないと見えてこない。みんなはそんなことはあたりまえだと思うかもしれないけど、ほら、こういう話をしていると、つい忘れちゃうことがあるでしょう。他人はもちろん、自分もその枠に押し込めてしまいそうになるでしょう」という話をした。
——クルミ世界の住人 / p12より
戦争があり日常がある。もう一年半以上、新聞のどこかに必ず「ロシア」や「ウクライナ」の文字がある状況が続いている。けれども国名を主語にした文章は、いちばん重要な問題から読者を遠ざけるばかりだ。
どちらの国が良くてどちらの国が悪いから、いいほうの国に武器を支援しましょうなどという発想をする人は、途方もなく多くのものに目をつぶっている。自ら目をつぶりなにも見えなくなった人が、地球上の武器を増やし、戦争を推し進めていく。
——巣穴の会話 / p149より
どうかあきらめずに、なによりも大切な自分の内面世界を守りながら、一緒に逃げ続けてください。絶望してしまわないためには物語が必要です。脱走兵の讃歌と、あたたかい思い出と、世界中の子供たちのぶんのクルミを抱えて逃げる決意をしてしまえば、どこかで同じように非戦を希求する仲間に必ず出会えます。
——あとがき 文化は脱走する / p216より
[目次]
クルミ世界の住人
秋をかぞえる
渡り鳥のうた
動員
ほんとうはあのとき……
猫にゆだねる
悲しみのゆくえ
土のなか
道を訊かれる
つながっていく
雨をながめて
君の顔だけ思いだせない
こうして夏が過ぎた
巣穴の会話
かわいいおばあちゃん
年の暮れ、冬のあけぼの
猫背の翼
あの町への切符
柏崎の狸になる
あとがき 文化は脱走する