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著者 / 初田哲男・大隅良典・隠岐さや香
編者 / 柴藤亮介
発行 / 柏書房
2021年4月25日 第1刷発行
四六判 / 216頁
ほんとうのイノベーションは、
ゆっくりと、予想外に始まる。
いつの時代も、研究者は未知に挑み、人類の発展に貢献してきた。誰も解明していない謎を追う人。社会課題の解決に努める人。いつ、何の役に立つかがわからなくても、未来へより多くのものを託そうとする人。
彼らの人生をかけた挑戦の積み重ねの先に、今の私たちの生活がある。そして、その原点にはいつだって飽くなき知的好奇心があった。
しかし、日本では現在、運営費交付金の減少や科学技術関係予算の過度な「選択と集中」などが原因で、研究者が知的好奇心をもとにした基礎研究を行いづらい状況にある。
それゆえ、イノベーションの芽を育てるための土壌が崩れつつある。
令和の時代において、研究者たちはどのように基礎研究を継続していくことができるのだろうか?
社会はどのようにその活動を支えられるだろうか?
そもそも、私たちはなぜそれを支えなければならないのだろうか?
本書は、各分野の一線で活躍する3名の研究者が、『「役に立たない」科学が役に立つ』をテーマにした議論を中心に、書下ろしを加えたうえでまとめたものである。
これからの「科学」と「学び」を考えるために、
理系も文系も、子どもも大人も、必読の一冊!
(柏書房のサイトより)
そもそも「役に立つ」とはどういうことかといったとき、それぞれの立場によって意味が違うということが一つのポイントになると思います。「役に立つ」と言うときに、お互いがその言葉によって何を意味しているのかを理解しないまま議論すると、まったくのすれ違いになるでしょう。
——「役に立たない」科学が役に立つ / p25より
日本においては「役に立つ」ということが、そのまま「産業の役に立つこと」や「生活が便利になること」というように、非常に狭い範囲で理解されてしまっているのです。だからこそ、いまの日本では「役に立つ」という言葉がものすごく氾濫しているし、私はそのことが、あらゆる意味で社会を窮屈にしてしまっているのだと思っています。
——すべては好奇心から始まる / p55より
だからこそ私は、研究があまりにも易々と「動員」されてはならないとも思うのです。本来、学問は何かの道具になるべきではなく、それ自体が目的であるべきもののはずだからです。
さらに言えば、私たちの知性には限界があります。「社会のために」というとき、「社会」という言葉の背後に特定の集団が隠れているのか、それともそれが人類全体なのか判別のつかないことがしばしばです。知の探究の本質を取り違えたうえで、さらに非人道的な取り返しのつかない振る舞いをすることがあるかもしれません。そうした愚行の抑止のためにも、「役に立たない」学問には常に一定の役割が与えられるべきでしょう。
——人文社会科学は「役に立つ」ほど危うくなる
/ p209より
[目次]
はじめに 科学とお金と、私たちのこれから(柴藤)
第一部 「役に立つ」ってなんだ?
1 「役に立たない」科学が役に立つ(初田)
2 すべては好奇心から始まる(大隅)
3 科学はいつから「役に立つ/立たない」を
語り出したのか(隠岐)
第二部 これからの基礎研究の話をしよう
1 「選択と集中」は何をもたらしたのか
2 研究者にとって「アウトリーチ活動」とは何か
3 好奇心を殺さないための「これからの基礎研究」
第三部 科学と社会の幸福な未来のために
1 科学と技術が、幸福な「共進化」を
とげるための実践(初田)
2 個人を投資の対象にしない、
人間的な科学のために(大隅)
3 人文社会科学は「役に立つ」ほど
危うくなる(隠岐)
謝辞 「役に立たない」研究の未来(柴藤)