発行 / 講談社
2023年12月20日 第1刷発行
新書判 / 256頁
電車の中や部屋の中、気が付けばいつもスマホをスクロールしている。本当は何が知りたいのか、自分に何が必要なのかわからないままSNSの世界に浸り続け、気が付けば自分自身を見失ってしまった——。
スマホ時代の過剰な繋がりによって失われた〈私〉を私たちはどうやって取り戻すのか。気鋭の哲学者による現代を生き抜くための思考法!
(講談社のサイトより)
私たちは世界の側を見すぎている。スマホのスクリーンを通して世界を見ることに一日の大半の時間を費やしてしまえば、それを見ている〈私〉を考えるための時間が無くなるのは当然だ。頭に余計なキャッシュが溜まりすぎて、動作が重くなっている。こうして、世界を見ている〈私〉の存在を意識できなくなる。何を見たいのかも分からず、何が本当に必要なのかも分からない。結果として、〈私〉は、それと気づかないうちに、世界の側に埋もれてしまうのだ。
——第1章 デフォルトの〈私〉 / p21より
根拠のはっきりしない物事については判断を急がない。ごちゃごちゃしているなら、判断をいったん脇に置いておく。とりあえず、うっちゃっておく。この判断を差し控えるという判断こそが、次に冷静な判断をしていくための心の準備につながるのだ。判断することに慣れてしまった私たちにとって、エポケーの実行には勇気がいる。それでも、エポケーは、相対主義と独断主義の双方から身を引き剝がすための最初の一歩となるのである。
——第2章 〈私〉を取り戻すための哲学的思考 / p96より
サイバースペースでは、欲望を打ち止めにしない工夫がなされている。次から次へとおすすめが出てきたり、新しい友達が紹介されたり、画像や動画が流れたりしてくる。その流れを止めることはできず、私たちはアルゴリズムに促されるがまま、無限のコンテンツの海をスクロールやスワイプで渡っていく。(…)つまり、欲望が充たされない構造になっている、ということだ。
このような自律的システムの内部にいったんはまり込んでしまうと、〈私〉が何を求めているのかを、立ち止まって反省するのは難しくなる。サイバースペースは、ゆっくり考えるための隙を与えない。自己デザインと自己消費の無限の運動だけが続き、〈私〉は、知らず知らずのうちに、アルゴリズムに淘汰されてしまうのである。
——第4章 ネガティブなものを引き受ける / p228より
[目次]
まえがき
第1章 デフォルトの〈私〉
第2章 〈私〉を取り戻すための哲学的思考
第3章 ポスト・トゥルースを終わらせる
第4章 ネガティブなものを引き受ける
あとがき
文献