発行 / 講談社
2023年10月3日 第一刷発行
四六判 / 160頁
男はいつの間にか、奇妙な列に並んでいた。
先が見えず、最後尾も見えない。そして誰もが、自分がなぜ並んでいるのかわからない。
男は、ある動物の研究者のはずだった。
現代に生きる人間の姿を、深く、深く見通す——。
競い合い、比べ合う社会の中で、私達はどう生きればいいのか。
この奇妙な列から、出ることはできるのだろうか。
ページをめくる手が徐々に止まらなくなる、最高傑作の呼び声も高い、著者渾身の一作。
(版元のサイトより)
その列は長く、いつまでも動かなかった。
先が見えず、最後尾も見えなかった。何かに対し律義さでも見せるように、奇妙なほど真っ直ぐだった。
——p3より
人間以外で最も知性のあるチンパンジーだけが、なぜ同種をこのように殺すのか。私見だが、チンパンジーが持つ知性が、殺した方が得であるケースに気づいたからではないかと思う。同種を殺すことに本能的・生物的な拒否感を覚えるはずだが、その感覚は「集団でやる」ことで分散し、誤魔化し薄れるのではないかと。
生物が生物を食すのを悪とせず、同種を殺すことのみを悪とするなら、動物に悪を可能にさせるのは知性ということになる。これに気づいた時、私はチンパンジーや人間に向かう生物史の密かな冷気を感じた。ようやく獲得した知性、それが悪を可能にする。
——p88より
「君は自分で思ってるより、きっといい奴だよ。みんなそうだ」
——p150より